死に物狂いで走る姿 | ナノ




 今俺にしては珍しく本気で走っている。何故なら目の前に俺の大好きな滝夜叉丸がいるから。滝夜叉丸“先輩”と呼べ!って声が聞こえそうだが無視無視、だって俺達恋人同士だろ?
 それなのに…

「来るなぁあああああ!」
「ちょ、逃げんな!」

 何か逃げられた。原因?わかんない、偶然会って尻揉んで叩かれてそれでも腰とか尻とか撫でたらこうなった。あ、原因俺か?
 そんなに必死になって逃げる事ないだろ、寂しいじゃん俺のどこが嫌なんスか言って下さいよ直すからって言ったら全部だって返された。結構凹む。

「つ、疲れた…は、ぁ…っ、滝夜叉丸てめえっ、止まれ!」
「先輩に向かって何だその口の利き方は!」

 凄いや先輩、怒りながら走ってるくせに息乱してない。本当は乱してると思うに一票。でも流石は四年生、俺との距離の差がどんどん離れていくし何故か滝夜叉丸はどっかに消え俺はいつの間に裏々山に来てしまった。

「…あれ、先輩どこ行った?」

 全くどこに行ったんだよ。可愛い恋人を置いてさっさと逃げちまうなんて酷い奴だ。また勝手な解釈だが俺的に先輩なりの照れ隠しだと思ってる。可愛い人だよ全く。

「三之助ー!」

 お、どっかから滝夜叉丸の声が聞こえた。何分前は怒ってたくせに結局探しに来てくれるから優しいんだよな。きょろりと周りを見渡すと紫の忍装束を身に纏った彼が走っていた。汗掻いてるし、顔は赤いし…何か…エロいな。
 ちょっとムラってきてしまったが我慢我慢。こんな所でするのは相手も嫌だし俺だって嫌だ。滝夜叉丸と大きな声で呼んで先輩の前にばっと出る。

「どこ行ってたんだこの馬鹿!」
「それは俺の台詞でしょ!」
「これだから無自覚方向音痴は…」
「何か言いました?」
「別に。帰るぞ」
「あ、帰ったら一発シませんか?」

 次屋三之助渾身の笑顔で言ったらとてつもなく嫌な顔をされた。だから何でそんな嫌そうにするんスか。つか首元とか鎖骨に汗が伝ってる、ちょっと拭いてくださいよ。つか何でそんな頬赤いんですか、襲いますよ。いいんですね、誘ったのはアンタです。据え膳食わぬは男の恥だっけ?それですそれ。

「オイ、次屋三之助」
「はい」
「また良からぬ事を考えているだろう」
「良からぬ事とは何でしょう」
「何で手をわきわきさせてんだよ、近付くな!」
「先輩の見間違いです。手をわきわきさせてるのは捕まえようとしてるだけで」
「何を!」
「俺の獲物を」
「来るなぁああああ!」

 と叫び声を上げてまた逃げてしまった。あ、待てこの野郎!と俺もまた追っかける。今度は俺が距離を縮めている番だ。肉食動物ってこんな気分なのか。
 必死に走る滝夜叉丸を追いかけるのって何だか楽しい。もう必死さがね、たまらない。可愛い。もっと汗だくになって俺から逃げて下さいよ。直ぐに捕まえてあげますから。









どこをどう間違えたのかギャグよりになっちゃいました。

君の手を引いて歩こう様に投稿させて頂きました。
ありがとうございました。



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