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2015 / 09 / 01 夏に付けられた歯形は


夏の暑さで可笑しくなっていたんだよ。悲しそうな横顔を私は横目に見ながら淡々と話す彼女の話に頷いていたんだ。悲しみという光が彼女を照らしていた。光がプラスの表現だなんて誰が決めたんだろう。悲しみを帯びた人は不謹慎だけれど美しいんだ。どんな時よりも人間らしくて引き込まれていくんだ。私は彼女を今までで見たいつよりも美しいと思ったよ。涙ぐむ彼女から溢れる誰かを思う気持ちとそこに見え隠れする憎しみが色に表現できない芸術品のように思えたんだ。

「私、汚いかな」
「貴方の心で遊んだ奴が汚い」

大粒の涙が彼女の化粧を落としていく。ハンカチを渡すと目元を抑えてしくしく泣いた。小さな嗚咽が彼女の秘密を作る合図のような気がして心の奥で何かが揺れた。それから少しの間、彼女は何も言わずただ今までの思いを涙にして零していた。冬に悲しんでいたら涙が凍っていたかもしれないから、涙がすぐ蒸発してくれると思う。きっと肌寒い今日が明日には暖かくなって貴方の笑顔に集まる向日葵が現れて抱きしめてくれるよ。それで貴方が満足するかわからないけれど。



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