※DOTM後設定
※両軍共存
※擬人化有り





◇◆◇◆◇



某日 ワシントンD.C.

普段は厳重な警備が敷かれ、極限られた人間しか入れないNEST部隊の総本部に、何故かその日は大勢の人間や車が出入りしていた。

通常なら出入口の警備や任務に赴いている筈のNEST隊員達は、今日に限って本部内をバタバタと忙しなく走り回っている。



「…なんか、大変そうだな」

"花嫁控え室につき関係者以外立ち入り禁止"という貼り紙のされたとある一室。

その中でカーリーとミカエラに髪を弄られながら、観月はぽつりとそう呟いた。

部屋の外からは「アレが足りない!!」やら《こっちに人手くれ!!》といった声が、種族を問わずに聞こえてくる。


ちらちらと頻りに外を気にする観月に、イヤリングやネックレス等の装飾品の用意をしていたアリスとアーシーは、クスクスと笑いながら口を開いた。

《そんなに心配しなくても彼らなら大丈夫よ》

《そうそう。それにさっきクロミアとフレアアップが手伝いに行ったから、大きな問題は怒らないはずよ?》
《小さいのは起こるかもしれないけど》とけろりと言ってのけた二人に、観月は疲れたように小さく溜め息を溢す。

観月の髪を弄っていた二人は、それに苦笑を漏らしながら鏡を手渡した。

「ほら、花嫁がそんな疲れた顔しないの!」

「今貴女がする事は、この姿でメガトロンの奴を惚れ直させる事よ!!」

そう言って肩を軽く叩いたカーリーとミカエラに返事を返す事なく、観月は渡された鏡に映った自分を凝視する。

それに大成功だと言わんばかりの笑みを浮かべて、カーリーとミカエラはお互いに顔を見合わせた。










『…………』

『…兄さん、大丈夫?』

『…多分』

観月はベールに覆われた視界で、隣で少しふらつく兄を心配そうに見上げた。

未だ扉は開いていないとはいえ中から聞こえ始めた厳かな音楽に、観月は戸惑い気味に観鶴に掴まるように腕を組む。

そして式の直前まで仕事に追われていたにも関わらず、それでも遠く海を越えた祖国に住む父の代理として駆け付けてくれた観鶴に、観月は小さな声で感謝の言葉を呟いた。

観鶴はそれに驚いたように目を見開いたが、次の瞬間には優しく微笑んで観月の頭を軽く撫でる。

それに観月が笑みを溢したのと同時に扉が開き、二人はゆっくりとした足取りで会場に足を踏み入れた。





会場に入った瞬間、二人は拍手に包まれた。

仕事の為に軍服ではあるが、それでも堂々と前を見据えて歩く観鶴と、それとは対称的に、俯き加減で淑やかに歩く観月。

誰もが皆――それこそ人間も金属生命体も関係無く、バージンロードを並んで歩く観月と観鶴を見つめている。

そんな周囲を盗み見て、観月は人知れず笑みを溢した。


観月が一人で笑っていると、ゆっくりと観鶴の歩みが止まり、それに伴って観月の歩みも自然と止まる。

観鶴に促された観月が顔を上げれば、目の前にはこちらを見つめるメガトロンの姿。

普段の軍服と違って白い燕尾服に身を包んだメガトロンに、観月は自然と顔に熱が集まって行くのを感じた。

《観月》

メガトロンは愛しげに観月の名を呼ぶと、ゆっくりと手を差し出す。

そんなメガトロンの手に、観月は微笑みながら己の片手を乗せた。





――随分と丸くなったものだ、と観月はメガトロンの隣に立ちながら思う。

彼独特の威圧感は今でも相変わらずなのだが、それでも以前と比べると、メガトロンはかなり穏やかな雰囲気を発するようになった。

そんなメガトロンの些細な変化に気付いたのは一体いつ頃で、何が切欠だっただろうか…。

観月がぼんやりとそんな事を考えていると、聖書を朗読していた筈の神父が観月とメガトロンをにこやかに見つめ、誓いの言葉を口にした。

それにメガトロンはやや間を開けてぶっきらぼうに答え、観月は穏やかに答える。


「では誓いの口付けを」

神父がそう告げると、メガトロンと観月は互いに向き直った。

そして、観月のベールがメガトロンの手によって、ゆっくりと上げられていく。

《…まさか、この俺が見下していた筈の人間を愛する事になるとはな》

『…まァ、人生なんてそんなモンなんじゃねェの?』

ベールを上げながらぽつりとメガトロンが呟いた言葉に、観月は苦笑してそう言葉を返した。

メガトロンはその答えにクスリと笑みを溢すと完全にベールを上げ、するりと観月の顎に片手を滑らせて上を向かせる。



そして、深く口付けた。





  





((人間も金属生命体も関係無い))

(俺達は、)
(私達は、)

((二人一緒に))

((この先の未来を歩んで行く))




――――――――

セレーネ様へ捧げます。
リクエストありがとうございました!




- 3 -


[*前] | [次#]
目次




戻る
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -