「キューブを車に乗せろ!」
レノックスがそう叫ぶや否や、サム、ミカエラ、観月の三人はカマロに変形したバンブルビーに素早く乗り込んだ。
ドアを閉めてすぐに、バンブルビーは滑らかに走り出す。
そんなバンブルビーの後部座席に腰を落ち着けた観月は、キューブを自分とエナメルバッグの間に置き、動かないように固定した。
そして膝に座らせていたアデルをノートパソコンに変形させると、そのキーボードをカタカタと忙しなく叩き始める。
それに気付いたミカエラが訝しげに観月に視線を向けた。
「ミツキ?何してるの?」
「ちょっとしたハッキング?」
「…ごめんなさい。
少しでもマトモな答えを期待した私がバカだったわ」
そう言って疲れたように溜め息を溢したミカエラに、観月は心外だと言わんばかりに眉間に皺を寄せる。
それにミカエラが首を傾げると、観月はハッキングの手を一旦止めミカエラの瞳をじっと見つめた。
「…何?」
「…なんでもない」
観月はそう言うとミカエラから視線を外し、アデルの名を呼ぶ。
アデルはその声にパソコンの姿のまま返事を返した。
《なぁに?》
「…ハッキングはもういい。追ってくる奴にはカウンターウィルスでもプレゼントして切り上げろ」
《あい》
アデルはそう言うと数秒間その動きを止め、観月はシートの背もたれに体重を預けて疲れたように深く息を吐き出す。
そんな観月に少し首を傾げながらも、ミカエラは視線を前方に見えるのダムの出口に向けた。
そんな観月達がダムから出たのと同時刻。
ダムの内部では凶悪な赤い双眸が、その禍々しい光を取り戻し始めていた。
Signal Fire of a march that groan
"進撃の狼煙が唸る"
(勝負はまだ)
(始まったばかり)
(せいぜい頑張りな)
(クソッタレ)
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