いくつもの通路を通って観月達が案内されたのは、大きな窓が備え付けられたとある部屋の中だった。
その部屋は随分長い間使われているらしく、古ぼけた煉瓦の壁には"THE FIRST SEVEN"の文字と、額に入った七人の男のモノクロ写真が掛けられている。
だが、今回初めてその部屋に入った者達はそれに気付きもせず、備え付けの大きな窓から見える巨大な"ソレ"を呆然と見つめていた。

「測定によれば、このキューブは紀元前一万年前のもので初代セクター7が発見したのは――…」

そうバナチェックがキューブについて説明する中、観月はゆっくりと窓に近付くと右手を緩やかに持ち上げ、それを窓に這わせる。
キューブに向けるその眼差しはどこか虚ろで、覇気が感じられない。


"漸く、見つけた"


頭の中で、誰かがそう呟いたような気がした。





「――…お陰でエネルギーは感知されずに済んだ。地球の外にいるエイリアンにもね」
「…ねぇ、キューブのエネルギーをダムに隠したって言ったけど…どんなエネルギーだったの?」

説明を終えたバナチェックに、マギーがキューブに視線を向けながらそう呟くように問いかける。
それは観月やサム、レノックス達も疑問に思っていたのか、各々速さに差はあれどキューブからバナチェックへと視線を向けた。

「…いい質問だ」

バナチェクはそう言うと、また一行を率いて部屋を移動する。


――その際に観月が『池○さん…!!!』と感極まったように呟いていたが、先程の騒動を経験していた面々はその発言を揃ってスルーした。








今度一行が通された部屋には、部屋の中央に様々なコードが繋がれた透明な四角いケースが設置されていた。
全員が中に入ると、ガチャンという重々しい音と共に入ってきたドアが内と外から厳重にロックされる。
ぐるりと部屋の中を見回せば、四方の壁全てに、何か鋭利な硬い刃物で引っ掻いたような痕があった。

「電子機器を持っている者はいるか?モバイルや携帯…」
「ほら、携帯」

シモンズの言葉に、エップスと壁の痕について話していたグレンが首にかけていた携帯電話をシモンズに投げ渡す。
シモンズはそれを受け取ると、部屋の中央にある四角いケースの中に入れた。
そして予め観月達に手渡していた、双眼鏡のような外観のゴーグルの装着を促す。
観月達は促されるままにゴーグルをつけると、ケースに入れられたグレンの携帯を見つめた。
シモンズが説明をしながら壁のレバーを操作すると、ケースの中にある太いペンのような装置の先端が真下の携帯に向く。

――瞬間、青白い光が稲妻のように強く瞬き、キューブの莫大なエネルギーが圧縮された光線が、ケースの中の携帯に照射された。

すると、一拍置いてから携帯がガタガタと激しく震え出し、一瞬で赤い目を持った小さなロボットに変形する。
観月達が驚く中、マギーが悲鳴にも似た叫びをあげた。

「何なのその怪物!?」
「地獄からやって来たダンシング・デビルさ」

マギーにそう返したシモンズの言葉をBGMに、観月達がケースの中の小さなディセプティコンを見れば、その小さなディセプティコンはケースに――正確にはケースの向こうの観月達に向かって攻撃し始める。


最初は小さなヒビだけだったが、幾度にも渡る体当たりや玩具のような小粒サイズの弾丸によって、段々とケースには大きく目立つヒビが入り始めた。
「ったく、箱が壊れるぞ」

シモンズはそう言うとケースに繋がるコードの一つを手に取り、それの先にある装置のボタンを押す。
するとケースの中の装置の先端から高圧のレーザーのようなものが数度照射され、それが小さなディセプティコンを焼き殺した。

サムやミカエラ、レノックス達がゴーグルを外しながらまじまじと焼死体を見つめる中、観月は同じようにゴーグルを外すと、不愉快そうに顔を顰める。
そして人間の勝手な実験の為に産まれ殺された、小さなディセプティコン"だったモノ"に、哀悼の意を込めて手を合わせた。


だが状況は深刻を極めるらしい。
観月の耳が遠方の微かな爆音を捉えたのとほぼ同時に、天井に吊るされた蛍光灯がチカチカと瞬く。

――襲撃。

その言葉が全員の頭を過った。


「…どうやら、キューブの在り処を知られた」

ケラーのその言葉により、全員の顔に徐々に焦りや緊張の色が表れ始める。
バナチェックが近くの通信機に駆け寄った。

「バナチェックだ、どうした!」
“NBE1の格納庫が停電し、サブパワーだけでは維持できません!!!”

通信機からのその返答に全員が目を見開いて驚愕する中、真っ先にレノックスが動いた。

「武器庫はあるか?」





「NBE1の保存室に急げ!早く行け!!」

そう大声で叫ぶバナチェックの指示に、通路にいた大勢の作業員達が保存室に走って行く。
すれ違い、追い越して行く作業員達の顔は恐怖や焦り、戦慄等に染まっていた。




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