エム/プロシュート

とても均整のとれた人。金髪を一部の隙なくしっかりと結わえて、長い睫にキレイなブルーの瞳の顔も小さければ引き締まった体は足も長くてこの雑多な街中でもイヤミなほど人目をひいていて。ホラまた、女の人は8割振り返っていく。

「… ミートパイぶっつけてやりたいわ」
「物騒だな」
「プロシュートの顔にミートパイ、生クリームでもいいわね、ぶっつけて、そんで舐めとってあげたいって今心底思ったの」
「メローネあたりなら喜ぶだろうがオレはごめんだ」

少し上を向いて視線をあわせれば、余裕綽々な顔に声色で「どうした」なんてわざとらしく。
一緒に歩いていたって彼女に見えないのだろうな、同僚とか友達とか、あぁ下手したら妹とか?もう一度視線を合わせて今度は大きくため息をついてみた。

「勿体無いわよ」
「何が」
「アンタ、その美貌とスタイルをもって世界征服とか企んじゃってもいいと思うわ」
「いつもにまして意味不明だな」

おかしい(この場合ファニーって事ね!)と言わんばかりに笑った彼の目尻に微かな笑皺が出来た。私はそれが好きだ。普段は見られないその皺を、街中の女は知らないだろう。だからあまりプロシュートを笑わせたくないのに、彼はいつだって私の言動に笑ってくれる。矛盾してるけど、やっぱりそれは嬉しい。私がしゃべって彼が笑ってくれるなら、そんなに幸せな事はない。だけどプロシュートが笑うのは、いつもそうあってほしいけど、その姿は特別で私だけのものがいい。


「理解して、って言ったらしてくれる?」
「善処する」
「ありがとう」


あぁその外見に合わせて中身もやっぱり均整がとれてるのかしら。案外紳士なのよね、そりゃあ惚れ込んでしまうわ私。あなたのこと、大好きよ。
だからもっと笑っていただこう。
そう思って、町中の人に見せつけるように彼に話しかけることにした。





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