おやすみ/リゾット

珍しい。
とても珍しい。
リゾットさんが熟睡している。

仕事柄なのか一緒に寝てたって私が寝返りをうつだけで目を覚ますような人なのに。

「リゾットさーん」
至近距離で、しかも小さな声で言った。普段ならすぐ目を覚ましてしまうだろう声なのに、今日は規則正しい寝息のままで瞳を閉じている。

彼の腕は私の腰に回されてくっついたままで私は逃げる事も出来ない。なので普段はこんなに凝視出来ないであろう顔や、やたら立派な腕や胸の筋肉を匂うような距離から見る事ができる。うーんステキ、照れてしまう。
その特徴ある瞳を縁取る案外長い睫とか、薄い唇とか、顎骨のラインとか。
マジマジと見つめながら、今さっきまでこの人に抱かれてたのかと思ったら急に恥ずかしくなってきた。あああ、思い出し恥ずかし!!

身を捩るように一人恥ずかしがっていたら、やっぱりというか当然というかリゾットさんは目を覚ましてしまった。そのぼんやりする自分を映す瞳を見て「ごめんね、起こしちゃった」。

「…、苦しかったか?」
「なんで?」
「寝づらかったのかと」

違う違うと首を振って、寝られなかっただけよと言えば、ああそうか、とリゾットさんはまた瞳を閉じて今度は私の頭を自分の首筋に押し当てて

「イチ、早くねろ」

まるで幼子を寝かしつけるように頭をポンポン叩きながら寝かしつけて来た。

鼻先をくすぐる肌の匂いとかすぐ近くに聞こえる脈の音とか、私の息が肌に当たって生ぬるくないかな、とか、とにかくこの方が眠れる気がしないんだけど!!

息をするのでさえはばかられるような距離で私はまた寝付ける筈もなく。その内また聞こえてきた規則正しい寝息を耳に、こういう夜もたまにはいいかも知れないと思った。

今晩くらい、私が守ろう。









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