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リップス/護衛チーム

※原作のその後の話です







いつものトラットリアの玄関をあけると、いつものウェイトレスとシェフがお辞儀をした。
声を掛けてから、誘導されるわけでもなく入る。慣れた足取り、その先にある部屋。

「ごめん、待たせた?」
「いいえ、そんなことありません」

個室のドアをくぐると中央にジョルノがいて、優しく笑んでいた。その右隣にミスタがピザを食べていて、左隣に一つ席をあけてフーゴがいた。

「何か食べていくか?」

ミスタに言われて、首を横に振った。おなかへってないわ、言ったら、ジョルノの前にあったガラス製の水入れからフーゴが空いていたグラスに水を注いでくれる。それを私の前において「水でもどうぞ」、置いた。
額の汗を拭ってジョルノの正面になるように座って、そして水を飲んだ。ドキドキと急いていた胸は段々と落ち着いてきて、それまで落ち着いていた涙腺は水分を得たことで少しだけ緩んだ気がした。誰にも気がつかれないように、瞬いた。


「じゃあ行きますか」

落ち着いた私はみたからか、ジョルノが席をたつと続いてミスタにフーゴが席をたつ。追いかけるように私も席をたった。もう置いていかれたくないもの。
トラットリアのスタッフに頭を下げながら颯爽とあるくジョルノの金髪を見失わないように少しだけ早足で歩いていたら、ミスタが手をとってくれた。フーゴがフッと笑って、私の後ろについたのがわかった。

4月の陽気は眩しくて乾燥していてサラサラと空気が動く。トラットリアの影から出ると石の建物に反射するみたいな白いヒカリが眩しくて目を細めた。

ジョルノが用意した車に乗り込むと、「いい天気でよかった」ジョルノが言った。

「そうですね」
「気分がいい」
「本当に」

誰からともなくつぶやいて、ソレが静かに会話になっていく。途中で落ち合う約束だったトリッシュが片手をあげて待っていたから、私はスライドをして隣に席をあけた。少しだけ丸みを帯びた体を私にくっつけて「久しぶりね」、若々しいリップを弾ませていった。

「本当、いい天気ね」

その言葉に、皆が笑ってしまった!和やかになった車内で「何よ!」トリッシュが不快に声をあげると「さっきもそう話していたんですよ」フーゴが言う。

それからくだらない話をして、いつの間にか目的の場所に着く。郊外にある小高い丘の上の墓所は晴れ渡った青空に草原と見紛うばかりに広い敷地の中にあり、トリッシュはいつかのブーツを履いたいたからよかったけれど、私はスカートにパンプスで少しばかりの悪路に「失敗したわ」と呟いた「来年から、スニーカーで来るからね」。

サクサクと草を踏みながら歩いていく。
その道すがら、ジョルノが何を元にしたのか花を沢山沢山生み出したから、後をあるく私とトリッシュはそれらを落穂ひろいのように拾いあげながら進んだ。
「ねぇジョルノ!オレンジのお花も!」
「紫のも欲しいわ」
「白いのも、ねぇ!」
誰かみたいなオレンジとか、思い出す紫のリップとか、白いスーツとか。いつしか私とトリッシュの両腕にはふんわりと山になるほどの花束が出来ていた。それを3つの墓石の前に、まるでレースみたく広げてみた。

「キレイ」

呟いたらトリッシュが肩を寄せてきて「全部残らず届くわ」といった。私の肩に頭を寄せて、少しだけ涙目で。
「泣かないでよ」
「イチこそ」
いつの間にかお互いの手を握ったら、暖かな陽気なのにトリッシュの手は驚くほど冷たかった。

それまで花をこれでもかと盛り付けていたジョルノが満足したのか「見ててくださいね」と呟いたのがわかった。黒髪のステキな人に。
「あっちで暇してるんじゃねぇかなぁ」
「案外、忙しいんじゃないですか?みんな何気にマメだから」
ミスタがワイン瓶を置きながら、フーゴがそれを3つに分けながら言っている。

「ここで、見ててくださいね」

またジョルノが言った。

「ここからなら、この街がよく見えますしね」
「オレたちもすぐわかるように動いてっから」

欲しい言葉は返ってこないけれど。
誰かが「いい天気だ」、また呟いた。
「明るいね」
「当たり前だろ」
「景色が、見えないくらい明るい」

沢山の色んな感情が綯い交ぜになって目を細めた。当然のように時間はすすんでいく。変化だってある。けれどそれは悪いことじゃあない。墓所を背にして振り返ると、遠くに街が見えた。ここは本当に見晴らしがいい。
しばらく黙ってそれを眺めて、「本当は」怖い。言いかけてやめた。だってきっとみんなそう思ってる。変化を恐れない人はいない。
「何?」
「なんでもない」
首を横に振って、また振り返った。

「ねぇ、トラットリアに戻るんでしょう?」
「当たり前じゃないですか」
「今日は仕事片付けてきたよな、ジョルノ」
「ミスタと一緒にしないでください」

フフと笑うとトリッシュが足を踏み出したのがわかった。続くようにみんなが丘を下りはじめる。なごりおしくてもう一度振り返ると、ジョルノだけ立ち止まってその手のひらからまた花を生み出して、かぜにのせて花びらが舞っていた。

「ジョルノ!」

呼んだら、ややしてから「はい?」振り返ってくれる。

「行こう」
「ええ」

春の暖かな空気に花の匂いが、まるで口紅のように鼻先にふんわりと香った。






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