「名前〜!見て見て〜!」


ぼんやりと短冊に書くお願いごとを考えとったら、威勢のええ声に思考を遮られる。うちの部の元気印は、猛暑も関係なしにパワフルやからホンマすごい。


『どないしたの?金ちゃん』
「これ、ワイの願いごとや!」


嬉しそうに言う金ちゃんの手にある短冊には、決して綺麗とは言えへん元気な字で書かれた願いごと。

それがまたいかにも金ちゃんらしゅうて、読んだ瞬間思わず笑うたら、金ちゃんが不思議そうな顔でこっちを見とった。ごめんね、悪い意味ちゃうねんで。


『金ちゃん、まだ食べ足りひんの?』
「うん!やって、たこ焼きめっちゃ美味いもん!」


“たこ焼きを死ぬほど食べれますように”と殴り書かれた短冊を手に、うっとり恍惚な表情を浮かべる金ちゃん。そないに美味しいたこ焼き屋さんがあるんやろか、教えてほしいくらいや。

それにしても金ちゃんが死ぬほどの量のたこ焼きって、‥考えただけでも恐ろしい。


「名前は嫌いなん?たこ焼き」
『ううん、私も好きやで』
「ホンマか!?ほなら良かった!」


不安そうな顔してみせたり、こっちの返事一つですぐに満面の笑顔になったり。金ちゃんの表情はくるくる変わるから、見てて飽きひん。

きっと人見知りもせえへん金ちゃんの中では、たこ焼き好きに悪い人は居らへんねやろな。どこまで行っても純粋な子。


『みんなで食べるん美味しいもんね』
「せやな!まぁ、寄り道したら白石に怒られるけど‥」


今度は、どんどん雲行きが怪しくなる金ちゃんの顔。‥これは、前に寄り道が白石にバレて説教されたんを思い出しとるんかもしれない。

金ちゃんの顔が曇っとるなんて何やもったいなくて、無意識にその野性味あふれる赤髪を撫でてみた。意外と触り心地ええねんな。


「名前‥?」
『今度、金ちゃんオススメのお店、私も連れてってくれへんかな?』
「うん!名前とやったら、も〜っと美味しなるわ!」


約束やで!と、目の前に小指を差し出してくる金ちゃんの顔は、いつも通りの笑顔。うん、やっぱり金ちゃんは、この顔が一番似合うとる。

小指で結んだ約束は、金ちゃんのお願いごとを叶えられへんかもしれへん。けど、金ちゃんの顔が笑顔になるためやったら、いくらでもたこ焼きを食べさせたりたいな、なんて。










天の川より眩しい、金ちゃんの笑顔

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