「な、なぁ?」
『‥ん、どないしたん忍足』
「ちょお、話したいこと、あんねんけど‥二人で」


昼休みの教室。斜め前の席でお弁当食うてた忍足が、いきなし声かけてきよった。何やねん、やけに顔真っ赤にしてからに。


『話って何やの?』
「ここやとちょっと‥、一緒に来てくれへん?」


ガタッと音を立てて席を立つ忍足の背中を追う。教室出るときに友達にちゃかされたけど、そんなんとちゃう。‥や、でもこの展開、どう考えてもそーゆーことやんな?あかんあかん、うちまで顔熱うなってきたがな!

そうこうしとるうち、忍足の足が止まったんは‥見慣れたテニスコート。うちらの部活の活動場所。


「よっしゃ、ここでええ」
『‥どないしたん、いきなし』
「ええか、よう聞きや‥」


振り返った忍足は、物凄い速さで深呼吸。さすがスピードスターやけど、多分それあんま意味あらへんで。ま、今は空気読んで突っ込まんとこか。


「あっ、あのな!」
『うん』
「お前に、その‥伝えたいことあってん」
『うん』
「‥笑わんと聞いてや?」


当たり前やん、て言うたったら忍足がはにかんで笑うた。

この流れはまさしく少女漫画な展開やんな?忍足なら、まぁちょおヘタレやけど顔も悪ないしええ奴やし、一緒居ったら楽しそうやし。せやけど二つ返事でオッケーすんのもしゃくやから、少し小芝居入れたろか!


『‥謙也、あんたの気持ちはよう分かったわ』
「え、俺まだ何も」
『ええねん!1年の頃から部活で一緒に居ったんやで?忍足の言いたいことくらい分かるっちゅーねん』
「え、‥ホンマに?」
『当たり前やろ?まぁ、うちかてそないすぐ返事できひんけど‥』
「は、‥返事?」


忍足は目を真ん丸くしてこっちを見とる。まさかうちがお見通しやったなんて思とらんかったんやろか。ホンマ可愛えやっちゃなぁ。


「‥ちょお、お前なんか勘違いしとるみたいやけどな」
『え?』
「俺が、お前に伝えたいんはな‥」


気付いたら忍足が目の前に来て、うちの両肩をがっしりと掴んどった。うわ、なんやめっちゃ目力強っ!そない至近距離で見つめんといて!


「いつもありがとう、っちゅー話や!」
『‥‥‥はぁ?』
「やって、マネって色々陰で大変なんやろ?そんで白石がな、たまにはお前に感謝したりやー言うて‥って、どないしたん?」
『や‥なんか、気ぃ抜けてもうた‥』


力抜けて、思わずその場に座り込んでもうた。何やねん、うちがただ勘違いしとっただけかいな。あー恥ずかし。そうならそうと、わざわざこないとこに呼び出さんでもええんちゃうかな。期待させよってホンマ、純情踏みにじられた気分やわ。


『‥けど嬉しいわ、おおきにな謙也』
「え、おかしない?俺がお礼言うてんのに」
『ええやんか別に、言いたなったんやもん』


そうやって感謝してくれることがめっちゃ嬉しい。まさか白石がそないなこと言うとったなんて思わんかったけど。それ聞いて素直に感謝してくれた忍足も、やっぱりめっちゃええ奴や。

そないな奴らやから、これからもマネとして支えたりたいなと思えるねん。ホンマ言い表せへんほど、ありがとう。










改めての、ありがとう
(さっきの、返事てどーゆーこっちゃ)(なな何でもあらへん、気にせんといて!)




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