昨日までの暖かさが嘘のように冷え込む今日は

君と近付ける、絶好の口実になる



「うっわ、さむー!」



そう言いながらも、どこか楽しそうなジロー

どうやら今朝の天気予報を見逃したようで

マフラーも手袋もコートも、何も持ってこなかったらしい



「名前見て、指真っ赤」

『鼻も真っ赤だよ』

「やべ、俺トナカイじゃん」



クリスマス早く来ねーかな、なんて

小さい子みたいなこと言って、はしゃぐ

そんなジローの手に指を絡めてみると

ひんやりとした温度が、伝わってきた



『ほんとだ、ジロー冷たい』

「名前が温めてくれるんでしょ?」



繋ぐ手に力が込められて、

こちらを見るジローは嬉しそうな笑顔

こうしてる間にも、私達の温度は混ざりあって

二人の温度になっていくから不思議



「あとね、首と顔も寒いんだけど」

『それはマフラー忘れたジローが悪いと思いまーす』

「え〜‥俺凍死しちゃうかもよ?いーの?」

『‥よくない、けど』

「でしょでしょ、じゃあ温めて?」



悪戯っこみたいにジローが笑う

むしろ、この為にマフラー忘れたんじゃないかって思っちゃうほど



『‥しょーがないなぁ』



周りに人がいないのを確認して

今まで繋いでた手を離したら

ジローの首に思いっきり抱きついて

その真っ赤な鼻に、キスをひとつあげる

ジローは少しだけ驚いたあと、すぐ不満そうな顔を見せた



「‥なんで鼻?」

『え‥寒そうだったから?』

「もちょっと下が良かったんだけど!」

『ジローはわがままだなぁ』



お互いに顔を見合わせて笑いあって

今度はジローの唇に小さいキスをあげた

寒さなんて、もうどこかに消えてしまって

ジローの温度が、私を包んでいた



「名前、すっげー温かい」

『ジローも温かい』

「このまま家まで持って帰ってもいい?」

『ばか』



その時のジローのかばんの中に

マフラーと手袋が入ってたことを知ったのは

それから少し後のこと
















(だって、くっつきたかったんだもん!)



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