俺のお気に入りの場所

中庭にある、大きなもみの木の木陰

クリスマスにはそりゃあ盛大に飾り付けされて人も集まるけど、初夏の今では人が居ることは滅多にない

静かで涼しくて、寝るには最高の場所

昼飯食った後はそこで寝て過ごすのが、俺の日課



(あ、誰かいるC‥)



いつもは誰も居ない木陰に、今日は先客が一人

俺しか知らないと思ってた場所に他人が居るなんて、ちょっと面白くない

でも今は腹いっぱいで眠気もピークだし、とりあえず木陰に近付いてみる



(‥‥寝てる?)



もみの木に上体を預け 脚を伸ばして眠る女のコ

手元に開いてある本が、そよ風でパラパラとめくられていく



(本読みながら寝ちゃったのかな?)



女のコを起こさないように、隣にしゃがみこむ

寝顔を見る限り、見覚えのないコ

ただ、とても綺麗な顔立ちをしてるってことは分かった



(っつーか、色白ぇ〜‥‥)



女のコって皆いつも元気に動き回ってるから、こんなにまじまじと見るのは初めて

白くて、細くて、でも触ったら絶対柔らかそうな手足

流石に触るつもりはないけど、そんなことを思った


(膝枕とか、ぜってー気持ちいいC‥)



そう思ったら、途端に睡魔が襲ってきて瞼が重くなる

そんな俺に追い討ちをかけるようにすり抜けていく心地よいそよ風

次の授業までまだ30分もあるし、女のコも起きる気配はない

ちょっとくらいなら、と自分に都合いい考えが頭に浮かぶ



(お借り、しま〜す‥‥)



こてん、と女のコの太ももに頭を載せるように、芝生に寝転がる

やっぱ樺地とか跡部のとは違って、ふにふにしてて柔らかい

もみの木の葉の間から漏れてくる太陽の光に、目を閉じる

女のコの規則正しい寝息に誘われるように、俺もいつしか夢の中へと落ちていった


















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