「何ボーッとしてんだよ、名前」


部活中、仕事もしねぇで呆けてるマネージャーに声をかけてみた。ら、何かすげぇ顔を真っ赤にしてやがった。うわ、なんか気色悪ぃ。


『亮〜‥』
「な、何だよ、何かあったのか?」
『私‥どうしたらいいと思う?』
「はぁ?」


いきなりすぎて、思わず間抜けな声が出ちまったじゃねーか。何か悩んでるみてぇだけど、何だってそんな気色悪ぃ顔してんだか。

当の本人は溜め息を吐いて、手に持ってた部誌を胸元で抱える。キャラ変わってるって、マジで。


『忍足ってさ、私のこと好きなのかな』
「‥‥あ?」
『夢の中にまで出てきたんだよね、2日連続で』
「‥や、それ偶然じゃね?」
『でも、その度に告られたんだよ?』


塾講師やら教え子やら意味分かんねぇこと言ってるけど、つまり夢の中で忍足に告られて名前もまんざらでもねぇってことか。

ここだけの話、実際のとこ忍足も名前のこと気に入ってるからな‥それが本気か冗談かは知らねぇけど。だからまぁ、適当にくっつけばいいんじゃねぇの。


『でも、悩みはそれだけじゃないんだよね‥』
「んだよ、めんどくせぇな」
『四天宝寺の子にも告られちゃった、しかも2人』
「四天宝寺‥白石と千歳か?」
『ううん、忍足くんと財前くん』
「忍足‥って、ああ例の従弟か」


何で四天宝寺のヤツまで出てきてんだか、夢ってのは本当意味わかんねぇ。四天宝寺とは対戦してねぇし、名前もそこまで知り合いってわけでもねぇはずなのに。

またボケっとした顔で『医者かっこよかった』だの『あんな幼なじみ欲しい』だの言われても知るかっつーんだよ、ったく。


『亮、私どうしたらいい?』
「知るか、所詮夢だろ」
『新たな恋の予感かな、これ』
「じゃあ忍足にしとけよ、身近で」


名前が誰と付き合おうと関係ねぇけどよ、わざわざ大阪の奴ら巻き込むよりも身内で済ませときゃいいじゃねぇか。その方が忍足も喜ぶだろ。はい、解決。

と思ったら、まだ何か納得いかねぇ顔で唸る名前。忍足の何が気にくわねぇんだよ、面倒くせぇな。


『や、忍足が嫌な訳じゃないんだけど』
「じゃあ何なんだよ」
『まだ大阪の2人のこと詳しく知らないし、もっと仲良くなる必要があると思うんだよね』
「‥いや、お前なぁ」
『だってもしかしたら2人のどっちかが運命の人かもしれないじゃん!』


いや、それだったら忍足だって運命の人とやらかもしれねぇじゃん。あれか、可能性を少しでも広げたいのか。女ってやつはつくづく打算的だな、やってらんねぇわ。


「宍戸、ちょおええか」
「何だよ忍足」
「俺、週末大阪行くから部活休むって跡部に言うといて」
「おう、分かった」


ふらっとこっちに来た忍足の一言に、名前のヤツすかさず反応しやがった。こりゃ面倒くせぇことになりそうだな、全く。


『亮!』
「‥知らねぇぞ、俺」
『ここまで聞いといてそれはないでしょ!私達も行こう大阪!』


あーもう、やっぱりそういう面倒な展開になんのかよ。しかも何で俺まで行かなきゃいけねーんだ、ありえねぇ。行きたきゃ一人で行けよ。

‥と思ったけど、ちょっと面白そうだから見守ってやってもいいか。忍足がどう出るのかも見てみたいしな。


「まぁ‥せいぜい頑張れよな、名前」
『うん、亮ありがと!』










もし、だったなら
(待っててね四天宝寺!)(なぁ宍戸、何で名前のヤツ気合い入ってんねん)(‥忍足、お前も頑張れよ)



―――

夢オチ、氷帝編。

宍戸くんは何だかんだ面倒見がいいって信じてる^^

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