『なぁなぁ聞いてよ蔵ぁー』
「おお どないしたん、名前」
『うちな、めっちゃおもろい夢見てん!』


部活後の後片付けの時間。今日の部誌にはどないなギャグ書いたろか考えとったら、後ろから思いっきし叩かれた。女のコのくせにようそない力出るなぁ、感心してまうわ。叩いた本人、めっちゃウキウキしとるけど。


「何、どない夢見たん」
『あんな、謙也が医者とか社会人になってんねん』
「へぇ、そらおもろいな」
『せやろ?しかもどっちもうちに告ってきてんで!』


しかも両想いんなってて、ホンマおかしいわぁ〜って一人で腹抱えて笑てる名前。端から見たら今のお前も十分やで、っちゅうのはお口にチャックしとこか。

それにしても‥夢ん中でもケンヤの奴、名前に惚れとんのかいな。夢なら言えるんに現実やとよう言われへんなんて、なんちゅう皮肉やろ。しかもめっちゃ笑われとるし、ホンマ不憫なやっちゃ。同情したるわ。


『あ、あとな、光が幼馴染みやったり先輩やったり‥』
「名前、そーゆープレイ好きなん?」
『そんなんちゃうわ!‥あ、そういや幼馴染みの光には告白されてんけど先輩の光は何もなかったなぁ』
「先輩財前に告られたかったんか」
『え、いや、そーゆーわけやのうて!』


そない顔赤うしとったら、認めとるようなモンやないか。ま、現実じゃ滅多に告られへん名前やし、夢ん中くらい幸せになったって誰も迷惑かからんからそっとしといたろ。

しかし、財前まで名前ん夢に出てくるとは思わんかったな。アイツも何だかんだ言うて名前んこと気にかけとるし、先輩とか財前が勝手になりたい思うとるだけちゃうか。


「ちゅうか、俺は出てけぇへんかったん?」
『うーん‥‥あ、』
「お、何や何や、どないな役や」
『あと謙也の従兄も出てきたわ、ユーシくん‥やったっけ?』
「俺ちゃうんかい」
『ユーシくん、塾の先生かと思たらうちの生徒になってんねん』


俺よりケンヤの従兄の方が先に出てくるってどないやねん。明らか優先順位間違うとるやろ。当の本人はそれより、その夢ん中で自分が標準語喋っとったことがおもろかったらしい。そんなん想像しただけでおもろいっちゅうねん。


『な?うち、夢ん中でめっちゃモテてん』
「神様からのご褒美なんとちゃう?」
『え、やっぱ蔵もそう思う?』
「現実じゃ男っ気サッパリな名前ちゃんへの、な」
『うっわ、むかつくわぁコイツ‥っ!』


あ、それやったらご褒美っちゅうより御慈悲かお情けか。まぁどっちにしろ、夢でそない幸せになれる名前が羨ましいわ。頭ん中お花畑なんやろな、ホンマ能天気なやっちゃ。


「‥で?」
『ん?』
「結局自分は誰が良かったん?」
『え〜‥』


選べへんわぁ、とか名前は嬉しそうに言うてるけどコレあくまで夢の話やで。うちの2人は実際惚れとるけど、ユーシくんは多分名前の存在知らんと思うし。もし知り合いになったら、正夢になる可能性あるかもしれんけど。


『謙也も光もユーシくんも、みーんな好き!』
「欲張りさんやなぁ、名前は」
『あは、自分でもそう思うわぁ〜』


なんちゅーお調子者な奴。せやけど、そないなとこも名前のええとこで、ケンヤや財前が気に入っとる理由の一つなんやろ。

果たして、どっちが先に名前を落とすんか。行く末が楽しみやんな。


「白石ぃ〜!」
「どないしたん、ケンヤ?」
「来週末ユーシが大阪来んねんけど、ウチの練習参加したい言うてん‥ええか?」


ええタイミングでユーシくんも参戦やんな。三つ巴っちゅうのもおもろそうやし、ここは大人しく見守ったろか。


「ホンマ、名前は幸せモンやな」
『え?あ、うん、まぁね!』










もし、だったなら
(ケンヤ、ユーシくんって一目惚れするタイプ?)(何で白石がそんなん気にしてん)(名前の幸せがかかってんねん)(‥部長キモいっすわ)



―――

まさかの夢オチ、四天編。笑

back


- ナノ -