「名字ー、これ教室まで頼むな」 『え、これって』 「みんなの分の資料集や」 『えええ!んなアホな!』 金曜日。日直やっちゅうことで日誌取りに職員室来たら、社会の先生に無理難題を押し付けられる。先生、うち女の子やで? 「1時間目使うからな、早よ頼んだで〜」 『あ、ちょお先生!‥行ってもうた』 残されたんはうちとクラス人数分の歴史の資料集。人数分てだけで大層重いのに、資料集なんて分厚いもん絶対あかん。 『せやかて往復すんのもなぁ‥』 呟いても助けが来る気配はあらへん。それどころか悩むうちをよそに、先生達は続々と授業に向かってく。やば、そろそろ授業始まってまう。 「あれ、名前やん」 『謙也!ちょうどええとこに!』 「何してん、授業始まるで?」 『これ一緒に運んでくれへん?先生に頼まれてん』 廊下をたまたま通りかかった謙也が神様に見えた。資料集の山を見た謙也は納得の表情。 「ほな、名前はコレ持っといて」 『コレて‥缶ジュースやん』 「俺が全部運んだるから、任しとき」 そう言うて軽々と資料集を持ち上げる謙也。ああなるほど、自販機いった帰りにココ通りかかったんやな。いや、それにしても頼もしいやっちゃ。 『重ない?少しは持てんで』 「あかん、力仕事は男のもん」 『せやけど‥』 「彼女に重いもん持たせるなんて出来ひんやろ?」 にかっと笑う謙也。何かこーゆーとき、いつもよりカッコよさが3割増になるんは何でやろ。や、普段からカッコええねんけど。 『ありがとな、謙也』 「どういたしまして」 男らしい一面 (あ!名前、今ちょお惚れ直したやろ)(‥少しだけ、な) ――― あー頭撫で回したい。← back |