※大学生設定





(‥もう、朝か‥‥)


レースカーテン越しの陽射しが、朝を知らせる。枕元の携帯で時間を確認したらアラームが鳴る3分前で、ちょっとだけ損した気分。

3分だけでも横になっていようと布団を掛け直そうと思ったけれど、お腹の上に載っている重いものがそれを阻む。そのおかげで寝起きの頭が少しずつ覚めてきて、今の状況を理解することができた。


(ああ‥、謙也くんち泊まったんだったっけ)


隣ですやすやと気持ち良さそうに寝息を立てている謙也くんは、あどけない寝顔でこちらを向いている。何なら口が半開きで、もうそろそろよだれが垂れてきそうなくらい。無邪気っていう言葉がピッタリ。

寝ている彼の腕は私のお腹にしっかりと回されていて、寝返りを打つと起こしてしまいそうだから、じっとしておくしかなかった。


(綺麗な髪色だなぁ‥)


陽射しに照らされて光る、謙也くんの髪。キラキラしてて、まるで謙也くんの明るい性格そのもの。初対面こそビックリしたけれど、いつしか見慣れて、むしろ謙也くんに一番似合う髪色だと思うようになった。

この髪色を維持するためにトリートメントが欠かせない、と豪語するだけあって、髪色の割にサラサラして触り心地がいい。起こさないようにそっと、謙也くんの前髪を指で梳かす。


(寝てると可愛いんだよなぁ、謙也くんは)


下がった眉尻、意外と長い睫毛、いい色に焼けた頬。普段、こんなに近距離で見つめることはないから、ここぞとばかりに寝顔を観察。よだれは‥うん、まだ大丈夫そう。

謙也くんはカッコいい。笑顔も素敵だし、男前なとこもあって、実は結構モテる。そんなことはないと本人は否定するけれど、多分それは本人が周りの女の子たちの好意に気付いていないだけ。‥まぁ、ずっと気付かなくていいんだけど。


(可愛い、可愛い、)


指の背で、謙也くんの頬を撫でる。起こさないように、と思ってはいても、触れてしまいたくなるのは何故なんだろう。

独り占めしたいから。私のものだって確かめたいから。色々考えてみたけれど、結論は結局のところ、謙也くんが好きだから。この言葉に尽きる。


「‥ん、名前‥?」
『あ、ごめんね、起こしちゃった?』
「平気や、‥今、何時?」
『そろそろ起きる時間だよ』


頬を撫でていた手を、不意にやんわりと掴まれる。温かくて大きな掌が、緩慢に私の指を掬って絡めとる様子を、ぼんやりと眺めていた。優しい手に、安心する。

大きな欠伸を一つして、謙也くんは本格的にお目覚めの様子。ちょうど良いタイミングで鳴ったアラームを止めて、布団から出ようと思ったけれど、思うようにいかなかったのは謙也くんの腕がまたお腹に回されて捕まったから。


『どしたの?謙也くん』
「まーだ、もうちょいゴロゴロしよ」
『でも‥謙也くん、今日1限でしょ?』
「大丈夫やって、本気出したら10分で行けるし」
『‥こないだもそう言って、遅刻したくせに』
「今日は大丈夫やもん、‥な?名前」


両腕でぎゅうぎゅう抱き締めてくる謙也くんの力に、私が敵うはずもない。その上、耳元でそんな甘く囁かれたら私が反論できないことすら知っているから、謙也くんはズルい。ズルいけどカッコよくて可愛いからって許しちゃう私もまた、相当謙也くんに惚れてるわけで。

大袈裟な溜め息を吐いて見せたら、謙也くんが楽しそうにはにかむ。おでことおでこを擦り合わせて、鼻先が触れ合ったらキスの合図。ちゅ、と軽快な音が響いては離れて、また重なって。


「名前、おはようさん」
『ふふ、忘れてたね。おはよう謙也くん』
「今日は自主休講して、名前と一日こうしとこかな」
『だーめ、ていうか私は大学行くからね」
「‥ま、行けるモンなら行ってみぃっちゅー話や」
『ちょ‥っ、力技は反則、だってば‥ぁっ』
「ほんなら名前が可愛えんも反則‥ほら、おあいこ」
『な、にそれ‥!』


すっかりお目覚めになった謙也くんは、気付いたら私の上に跨って両手を捕まえていた。口角を少し上げて笑う謙也くんは、さっきまでの可愛さはどこへやら、カッコいいを通り越して‥やらしい。

こうなってしまったら、私は何も抵抗できないまま、謙也くんの手の中に落ちてしまうだけ。窓の外の陽射しを遠目に、今日も暑くなりそうだとぼんやり考えた。










太陽に焦がれる



ーーー

謙也くんとイチャイチャしたかっただけ‥笑


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