『あ、忍足くんや、何してるん?』


よう晴れた日の昼休みは、屋上がだいぶ賑やか。みんな太陽の光が恋しいんやな、なんて光合成しながら屋上にいる人たちをぼーっと眺めとったら、見知った金髪が目に入った。太陽によう映える髪色。

先日の仲良し宣言後、面と向こうて話す機会はあらへんかったから、何だかちょおこそばゆい感じ。だけど"仲良し"なんやし、声かけたって変ちゃう‥はず。


「あっ、お、おう、名字さん、」
『ぷっ、何でそないどもってんねん!』
「ど、どもってへんし!」


‥なんやけど、忍足くんの反応が何やイマイチぎこちない。こないだのそっけない態度とは違うんやけど、なんか‥挙動不審?ちゃんとこっち向いて話してくれとるから、嫌われとるんちゃうことは分かるんやけど。何や、おかしいやっちゃ。

そない不思議な反応の忍足くんの、そのまた隣からひょっこり顔を出したんは、淡い髪色をしとる男子。あ、この子は確か、テニス部の部長の白石くん。喋ったことはあらへんけど、うちの女子生徒で彼を知らんヤツはおらへんくらいのイケメン。とりあえず、会釈。


「あ、もしかして自分、名字さん?」
『うん、そうやけど‥』
「俺は白石や、ケンヤと同じクラスやねん」


よろしゅうな、と爽やかに笑う白石くんはなるほどイケメンで、そりゃみんなイチコロやな、と一瞬で納得させられた。相変わらずぎこちない態度の忍足くんの隣に居ると、そのスマートさは一目瞭然。

何で私が白石くんとよろしゅうしてるんかはよう分からんけど、きっと白石くんも忍足くんの仲良しで、友達の友達は友達っちゅうことなんやろうと思う。‥多分。


「このアホが名字さんに迷惑かけたんやろ?堪忍なぁ」
『全然、もうすっかり元気になったし!』
「ええから白石はあっち行きや、もう!」
「えー、俺も仲間に入れてぇや〜」


忍足くんに背中をぐいぐい押されながら、またな〜言うて笑顔で手を振りながら去っていく白石くん。何も考えんと思わず振り返してもうたから、イケメンの威力は凄まじい。

目の前の忍足くんは何やらブチブチ言いながら、頭をぽりぽり掻いとる。何があったんかよう分からんし、この何とも言えへん空気感をどないしたらええんやろか。


「‥あ、せや、名字さん」
『‥?どないしたん、忍足くん』
「さっき、声掛けてくれておおきにな」


ビックリしてキョドッてもうた、なんて照れくさそうに笑う忍足くんは、いつも通りの忍足くんやったから何や一安心。

私が挨拶してビックリしたっちゅうことは、もしかしたら、忍足くんもきっかけを探してくれてたんかもしれへん。あの宣言以降、私達が仲良しになるための、きっかけを。


『あ、ええこと思いついた』
「何や?」
『私も、下の名前で呼んでもええかな?』
「おう、ええで、もちろん!」
『おおきに、謙也くん』


本人のお許しが出たから早速呼んでみると、忍足くん改め謙也くんはまた照れくさそうにはにかんだ。男の子に対して失礼な表現かもしれへんけど、何や可愛い顔で笑う人やなぁ。普段は普通にカッコええねんけど。

新たな謙也くんの一面を見られたから、今日はええ日。友達に誘われて屋上に来た甲斐があったっちゅうもんや。


「あー‥ほな俺も名前で呼んでもええ?」
『うん、お好きにどうぞ』
「ははっ、おおきに名前!」


さっきまでぎこちなかった人とは思えへんくらい、とても楽しそうに笑う謙也くんがキラキラ光って眩しいんは、きっと今日の太陽のせい。










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