『ねぇ、手ぇ貸して』


きっかけは、ただの興味。あのポーカーフェイスな忍足侑士の手はきっと冷たいんだろうな、と、ふと思っただけだった。そう思った次の瞬間には、手を差し出していた。


「どないしたん、急に」


だから、別にそれを拒まれたとしても、何とも思わなかったと思う。きっと、ではなく、絶対冷たいに違いない、と確信に変えただけだっただろう。

でも、意外なことに、私の差し出した手の上には、忍足のそれが重ねられた。しかも、想像と反して温かくて、大きくて、まめがたくさんできているその手が。


『‥あ、あったかい』
「人を何やと思てんねん」
『冷たいと思ってたから、ごめん』


軽くぎゅっと握ってみたら、忍足の手は私よりも温かかった。重なった二つの手を眺めていたら、その大きさも想像以上に差があって驚く。男子って身長だけじゃなくて手も大きいんだな。


『ありがとう、忍足、もう大丈夫』
「ん、ほな今度は俺の番やな」
『え?』
「もう少し、繋いどってもええ?」


手の力を緩めて、忍足の手を解放しようとしたら、今度は忍足の手にぎゅっと掴まれた。私がしたよりも少し強めの力で、決して痛くはないけれど、さっきよりも忍足の手の温度が伝わってくる。

温かい、よりも、熱いくらいに感じてきたのは、私の手の温度が上がってるからなのだろうか。本当に今更なのだけど、男の子とこうして手を繋ぐことに慣れていないから、緊張してきた気がする。手汗なんてかいてないといいんだけれど。


「名字の手も温かいなぁ」
『そ、そう、かな』
「‥何や、緊張しとるん?」
『‥‥!』


そう言って私の顔を覗き込む忍足は、とても憎たらしい余裕綽々な笑顔。それに加えて、手の指と指を交互に絡ませて握ってくるところを見るに、きっと私の顔は手以上に熱く、赤くなっているに違いない。

ああ、所詮私よりも忍足の方が一枚上手だったということか。










ぬくもり
(そろそろ離して‥)(嫌、て言うたら?)



−−−

BGMはて〜つなご。で笑


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