「なぁなぁ、名前ー」
『ん?』
「俺、どないしたらモテると思う?」


まーた始めよったコイツ。もうええ加減うんざりやねん、その話題。たまたま隣の席やからって毎回毎回聞かれるコッチの身にもなれっちゅーモンや。

そないなコッチの気持ちも知らんと、目の前の男はしゃあしゃあと喋り続けるからまた手に負えん。


『謙也‥うちばっかに聞かんと、たまには他にも聞いたら?』
「えー?せやかてなぁ‥名前くらいしか相談できる女子居らんねんもん」


「俺シャイやからぁ〜」て頬っぺたに手ぇ当ててブリっ子されても、みんなと仲ええ謙也やと全然説得力あらへん。自分いっつも他の女の子ともよう話しとるやん、たまにはその子らに聞いたらええんちゃうの。

ちらり、隣の謙也の顔を窺うたら唇尖らしてお気に入りらしい消しゴムをいじっとった。


「名前は俺の何がアカンと思う?」
『‥は?』
「俺がモテへん原因、そこ直せばモテるようなると思うねん」


無造作にペンケースからシャーペンを出したかと思たら、さっき配られた英語のプリントの裏に何やら書き出しよった。なになに、謙也くんモテモテ大作戦?ホンマ何ちゅーか、謙也が可哀想に思えてきてもうた。


「やっぱアレなんかな〜」
『何?』
「これ、髪の毛」


そう言うて前髪を弄る謙也。まぁ確かに金髪言うたら最初はちょお引いてまうやろうけど、謙也ん場合はちょお違う。顔からええ奴オーラ出とるし、口開いたらただのアホやし?

ちゅーか金髪は別にマイナスちゃうと思うし、そんなんで引くような女なんかに謙也は合わへん。


『‥謙也は、さ』
「ん?何や」
『何でそないモテたがるん?』


せやかてそうやろ、知らん人達にモテたからて面倒臭そうなだけやん。蔵を見てみぃ、休み時間の度にいちいち呼び出されてんねんで。あんなん、端から見たら只のありがた迷惑やろ。謙也はああなりたいんやろか。


「そんなん当たり前やんか」
『は?』
「モテるっちゅーことは誰から見てもカッコええっちゅーことやろ?」
『そらまぁ‥せやなぁ』
「そしたら、名前がみんなに自慢できるような彼氏になれるっちゅーワケや!」


ちょお待ち。いや、謙也めっちゃどや顔しとるけどもやな。めっちゃツッコミたいとこ一つあんねんけど、ええやんな?


『‥うちら、別に付き合うてへんよな?』
「おう せやから俺がモテるようなったら、名前に告白すんねん」


もちろん、オッケーしてくれるやろ?

うちの答えなんか聞かんと嬉しそうに笑う謙也はおかしい、けど何やどっかで喜んどる自分。もうちょい人の意見尊重したろとか思わへんのかな。‥ちゅーかそもそもの順序おかしない?


『‥うちが振ったらどないすんねん』
「名前はそないなことせぇへんって分かっとるし」
『どっから来んねん、その自信』
「こない下らん相談に毎度乗ってくれるん、自分くらいやで?」


独自の理論展開に呆れて溜め息吐いたら、謙也がまた楽しそうに笑た。










全ては、君のために
(わざわざモテへんでもええねんけど)(ん?何か言うたか、名前)(‥何でもあらへんわ)



―――

肉食系謙也目指して撃沈。


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