「名前ー、今からプール行くでプール!」 『はぁ?何言うてん、いきなし』 「ええからええから、早うせんと置いてくで」 『全くもう、何なんホンマ‥』 家中にけたたましく響くチャイムを鳴らした犯人は、こっちの言い分も聞かんと一気にまくしたてよる。昨夜電話したときかて全然そんなん言うてへんかったくせに、朝になって何を急に言い出すねん。 『お待たせ、謙也』 「ホンマ待ったっちゅーねん‥何しててん」 『いやまぁ、そら‥色々?』 「ふーん‥まぁええけど」 プールの準備をして玄関のドアを開けたら、すっかり待ちくたびれてぶーたれた顔で座り込んどる謙也の姿。ああ、そういや待ち時間苦手やもんね。せやけどこっちかて色々乙女の準備っちゅーもんがあんねん、大目に見たって。 『ほら、行こ?』 座っとる謙也の目の前に手を差し出したら謙也が握り返して、勢いよく立ち上がる。さっきまでの不機嫌そうな顔はもうどっか行って、今は太陽みたいな明るい笑顔。 『ねぇ、謙也』 「ん?なんや、名前」 『何でいきなりプールなん?』 繋いだまんまの手がいつの間にか汗ばむくらいの猛暑日。プール入りたいっちゅう気持ちも分からんでもないけど、それにしたって急すぎる。謙也って、そない無計画なヤツちゃうかったと思うねんけど。 「せやかてアレやん」 『何やねん、アレって』 「せっかくの夏やっちゅーのに、勉強ばっかしとんの勿体ないと思わん?」 やっぱ夏は楽しんでナンボやろ!て笑て言う謙也につられて笑てもうた。 謙也は3月生まれのくせに夏がよう似合う。今年は部活の大会でほとんど夏が終わってもうたみたいやけど、残りの夏休みも満喫するつもりなんやろな。ホンマ、タフなやっちゃ。 『ほな謙也、勝負せぇへん?』 「ええで、何でする?」 『25mどっちが早う泳げるか、とか』 「乗った!浪速のスピードスターは水陸両用やっちゅーとこ見せたるわ」 謙也と居ったら絶対楽しい夏になるって、うちの直感が叫んどる。せやから一緒に過ごせる夏の時間、一秒も無駄にはできひん。とことん楽しまな損、楽しんだモン勝ち!せやろ、謙也? 繋いだ手に思わず力を籠めたら、謙也もぎゅうって握り返してくれた。うちの気持ち、きっと謙也にも伝わったんやと思う。 「名前、ちなみにちょお聞きたいねんけど」 『ん?』 「その‥今日のアレやアレ、水着!」 『水着がどないしたん?』 「いや、名前のはどんなんなんやろー思て」 『そら‥三角ビキニ、しかも豹柄』 「えぇ!マジでか!アカン!そんなんアカンでぇ!」 『なわけあるかいな、普通のんや』 「‥ですよねー」 『‥そない残念がるなや、スケベ』 夏は急げ! (よっしゃ、午後は海行くで)(思いつきにも程があるわ!) ――― 謙也の水着姿とか見たい‥^^!! back |