「で?詳しく教えてもらおか、名前」


ソファに足を組んで座っとるんは名前の従弟っちゅう白石蔵ノ介。名前と俺とケンヤはその足元に正座。何なん、この構図おかしないか。


「‥何で俺らまで正座せなあかんねん」
「バレてもうた以上、俺らも連帯責任やろ!」
「あそこでお前が出ていかんかったらバレへんかったんちゃうか」
「う‥まぁ、そらそうなんやけど」


まぁ大体こないマンションの一室でバレへんように身を潜めるなんて最初っから無理あんねん。白石かて薄々気付いとったみたいやし。ようこんなんで隠し通せると思うたな、ホンマ。

ケンヤとひそひそ話しとるうちに、名前が白石に事情を説明し終えとった。やること早いな、相変わらず。


「なるほどな‥経緯は大体分かったわ」
「さすが白石、話の分かるやっちゃ!」
「せやけどな謙也、今お前らがここに居る理由にはならへんやろ?」
「‥?どーゆーこっちゃ」
「アイツ、俺らに早う新しい部屋見つけて出ていけ言うてんねん」


さすが、白石は鋭いとこ突きよる。ケンヤもやっと意味が分かったらしく、ええ!?なんて無駄にデカいリアクション。名前は視線落として黙ったまんま。

きっと名前も心のどっかで考えとったんやろな、そのこと。あからさまにそない寂しそうな顔せんといてぇな、敵わんなホンマ。


「侑士クンは謙也と違うて、物分かり良うて助かるわぁ」
「こんなんと一緒にすんなや、‥せやけど」
「ん?」
「素直にハイそーします、なんて言うとは限らへんで?」


皮肉も込めて思いっきし笑顔で言うたったら、白石の顔が少し歪んだ。イライラしとるんがよう分かるわ、男前が台無しやで。

大体な、お前に言われへんでも重々分かってんねん。最初ここに住まわせてもらうときに、名前に早う次探すよう言われとったんも忘れてへん。せやけど、そうしなかったんは理由があるからや。


「好きやねん俺ら、名前のこと」
「え‥ちょ、ユーシお前、何言うて‥!」
「ケンヤはちゃうんか?俺は好きやで」
「そんなん、俺かて大好きやっちゅー話や!」
「‥もちろん同居人として、な?」
「え?あ‥うん、あぁ、もちろん」


あ、ケンヤの奴、今絶対勘違いしとったな。まぁケンヤがどーゆー風に名前んこと見とるかなんて、今はどうでもええ。

俺らがあんまり素直に言うたからか、白石も唖然とした顔しとる。さっきまでの勢いはどこ行ったんや。


「せやから俺らはここに居りたい、名前が許してくれるんなら」
「‥ズルいわぁ侑士クン、その言い方」
「何とでも言い、あとは名前の気持ちだけや」


ここで今まで通り暮らしたい、それは俺らの勝手な思い。それを名前が許してくれへんかったら、望んでくれへんかったら意味ないねん。


「‥な、名前はどう思っとる?」


まぁこない質問したとこで、大方の答えは分かりきっとる。せやけど白石も居る手前、ここらでハッキリさせとこうやないか。


『わ、私は‥っ』
「名前‥」
『2人と、暮らしてたい‥です』
「‥名前、ホンマにそれでええんか?」


白石がそう問いかけたら、名前はしっかりと頷く。あんなにビビっとった白石によう言えたな、なんて感心さえしてもうた。せやけど、名前もそう思ってくれとるっちゅーことは素直に喜んどこか。言い返してくるかと思たけど、白石もそれ以上問い詰めることはせぇへんようやった。

よう出来ました、の意味も込めて名前の頭を撫でたったら、ようやっといつもの笑顔が見れた。これで一件落着、大団円っちゅうとこやろか。


「名前‥自分、変わったなぁ」
『え‥そう、かなぁ?』
「なんや逞しなったっちゅうか‥頼もしなったわ、もう大丈夫そうやな」
『蔵ノ介、ありがと‥多分2人のおかげだと思う』
「まぁそやろな‥あんま認めたないけど」


白石が今まで口うるさくしとったんも、白石なりに名前のこと心配してのことやったんやな。それにしては随分、従姉思いやんけ。自分こそ、気持ちに素直んなった方がええんとちゃうか。ま、他人の恋に口出すんは野暮やし、やめといたるけど。


「‥おい謙也、それと侑士クン」
「何や、白石」
「どうせ名前に手ぇ出すな、とかそーゆーこっちゃろ?」
「ええ線いっとるわ侑士クン、せやけどちょお違うで」
「ほな何やねん、勿体つけんと早う言いや」
「俺は名前の従弟や、それがどーゆーことか‥手ぇ出す前によう考えるんやな」


ニヤリと笑う白石と、相変わらずよう分かってへんケンヤ、それに会話についてこられてへん名前。そんなん大した脅迫ちゃうけど何かとややこしいことになるんは明らかやし、そこらへんはもうちょい様子見といこか。


『あ‥私、そろそろ夕飯作ってくるね』
「え、そんなん謙也たちにやらせといて俺らは風呂入ろうや」
「ちょお待て白石、何でそうなんねん!」
「ここは正々堂々ジャンケンで決めたらええんちゃう?」
「よっしゃ‥勝ったモン勝ちや、決まったら文句はなしやで」
『いや、え、ちょっと待って、話おかしい!』
「「「じゃーんけーん‥」」」
『いやーーーーー!』











(あいこばっかやな俺ら)(もう全員で入ったらええんちゃうん)(そない風呂広ないで)(もういい加減にして‥)



―――

上の台詞は白石、謙也、侑士、ヒロインの順。


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