「よっしゃ、連休やぁ!」


謙也が大学から帰ってくるなり叫ぶ。その声にカレンダーに目をやって、大事なことを思い出した。


『え、ウソ‥もう明日からGW!?』
「な‥どないしてん、名前」
『ヤバい、すっかり忘れてた‥』
「何や何や、どないしたん」
「あ、ユーシ‥名前がなんやめっちゃ焦ってん」


私の声に、キッチンで冷蔵庫を漁ってた侑士も寄ってくる。でもそんな冷静じゃ居られないんです今は。


『実はね、GW中に私のいとこが泊まりにくるって約束してたんだけど』
「ほう、仲ええやん」
『凄い過保護で、私が一人暮らしするって時も親以上に反対してきて』
「名前のこと心配しとるんやなぁ、ええいとこやんか」
『‥今うちに男が住んでるなんて知られたら‥うわあああ!』
「え、ちょ、名前、いっぺん落ち着き!」
「‥余程怖いんやな、そのいとこ」


侑士なかなか鋭い。そのいとこってば私より年下なはずなのにやけにしっかりしてるというか、とにかく私に対して過保護。お母さんみたいな感じで、何度説教されたことか数えきれない。

ああもう、考えただけで頭と胃が痛い。頭を押さえたら、謙也の心配そうな顔がチラッと見えた。心配してくれてありがとね。ちょっと癒される。


「怒られんの嫌やったら、適当に理由つけて断ったったらええやんか」
『‥今更断ってもきっと来ると思う』
「うわ、迷惑なやっちゃなぁソレ!」
『なんかもう‥どうしよう』


いくら頭を働かせても解決策は見当たらなくて、目の前が真っ暗。あのいとこに怒られるのは正直、精神的にキツい。ああもう本当にどうしよう。ソファに仰向けに寝転がってもやっぱり答えは出ない。


「ところで、どないな奴なん?名前のいとこっちゅうのんは」
「うんうん、俺もソレ気になるわぁ」


侑士と謙也がラグの上に腰を降ろす。やっぱり自分たちも従兄弟同士だから、いとこって言葉に敏感なのかな。んなわけないか。


『私のいとこ、大阪にいるんだけど』
「へぇ、ほな意外と俺らと知り合いやったりして」
『あ、でも歳も同じくらいだからもしかしてそうかも!テニスもやってたし』


うん、確かいとこも今年向こうの頭いい大学入るって言って自慢された気がする。本当、テニスにしろ勉強にしろ何やらせてもこなしちゃう辺りがムカつく。まぁ、性格の差だろうけど。


「え、ほな高校とかは?」
『高校は忘れたけど‥中学は確か、し、し‥』
「し、ってまさか‥四天宝寺、とか?」
『ああ、そんなんだった気がする』
「えええ!?それ、俺の母校やねんけど!」


謙也いきなり大きい声出さないでよね、びっくりする。まぁ、まさか母校の名前出てくるとは思わないよね。大阪って言ったって広いし。

ん?同い年で同じ中学でテニスやってた、ってことはもしや。


『謙也‥白石蔵ノ介って知り合い、いる?』
「知り合いも何も俺らの代の部長‥て、まさか、え?」
「‥世の中、狭いもんやな」


まだ頭がついてかない謙也を他所に、一人で感心する侑士。てゆか侑士も蔵ノ介のこと知ってるんだ。まぁ、全国行くほどの学校同士なら当然か。


『あ、でも知り合いなら怒られることないかも』
「いや逆に余計怒るかもしれへんで?」
「あ〜白石、変に細かいとこあるからなぁ‥ユーシなんか見るからに危険やし」
「あほ、お前かて十分やろ」
『ああ‥もうやめて‥』


2人の言葉に、何だかますます明日が不安になってきた私に追い討ちをかけるように届いた、一通のメール。もちろんそれは渦中の人物からで。


【明日の夕方には行くから、俺の寝る部屋だけでも綺麗にしときや?】


貴方の寝るつもりの部屋には既に先客が2人もいます、だなんて言えるわけもなく。静かに携帯を閉じた。











(蔵ノ介は私の部屋に寝かせるかな‥)(いやいや、それはアカンやろ)(せやで、ほならケンヤをソファで寝かし)(何でやねん!)



―――

突発的な従兄弟設定。笑


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