※侑士夢『目指せ!!完全燃焼』の続き





『忍足、何してんの』
「おお名字、居ったんか」
『いや、居ったんかじゃなくて』


私の机の中に隣の席の忍足が何かを押し込んだのを、私は見逃さなかった。指摘してもちっとも悪びれない忍足が憎らしい。

自分の机に手を入れて確認したら、出てきたのは入れた記憶のない雑誌。女性誌なんてどの面下げて手に入れたんだか。


「姉貴にもろてん、名字にソレやるわ」
『別に要らないんだけど』
「まぁまぁそう言わんと、表紙よう見てみ?」


忍足の言葉に、手にしていた雑誌の表紙へと視線を落とす。『2週間でメリハリボディ!』、『あなたにピッタリなダイエット法、教えます』。

‥ははーん、そういうことですか忍足侑士くん。いや、そんな笑顔向けられても!


「ホラ、自分で買いにくいやん?その手の雑誌」
『まぁ確かにそうだけど』
「姉貴が好きな俳優のページ切りとってもうてんけど、特集んとこは残っとるから安心しぃや」


嬉々として話す忍足にどこから突っ込めばいいのか分からずに、思わず右手に握りこぶしをこさえる。

その眼鏡、どうせ伊達なら割っても構わないよね?ていうか私そろそろキレてもいいよね?


「せやから前に言うたやん、好きやからって」
『だ、からって、‥やってい、ことっ‥!』


「え‥名字、‥泣いとる?」


そんなの、こっちが聞きたいよ。私のこと本当に好きなんだったらもっと優しく接するんじゃないの?どうしてそんな扱いしかしてくれないの?

正直なところ、あの緑茶を貰った日以来、私だって自分なりに身体に気を遣ってきた。他人から見たら分かんないかもしれないけど、数字的にはちゃんと成果は出てる。そのくらい気付いたらどうなの、この変態眼鏡バカ。

ああもう涙が止まらない。こんなアホのために頑張った私が馬鹿だった。


「‥すまん、名字」
『‥っ、‥!?』


いきなり、涙を拭ってた手を引かれて忍足の胸の中に収められる。教室中の黄色い声が聞こえるけど、そんなの構ってられない。


『ちょ、っ‥はな‥』
「‥俺知ってんで、」


名字が俺に内緒で頑張っとることくらい


さっきまでとは全然違う忍足の口調。まるで幼子を諭すように優しい。

何で知ってるの。バス通学から自転車通学に変えたり、学校のジムに放課後通ったりしてるのも忍足のせいなんだからね。


「俺のため、やんな?」
『し、らないっ‥』
「めっちゃ嬉しい、好きやで名字」


忍足が腕に力を込めて、私を抱き締める。だから余計に涙が溢れる。

私、いつから好きになってたんだろう。こんなしょうもない変態。


『ちょっとどこ触ってんの』
「気持ちええねんもん、ダメ?」
『‥まだダメ』
「やっぱり名字はこのまんまがええわ、俺」
『わがまま男め』
「アホ、無理せんでええ言うてんねん」
『‥ありがと』










ハートは完全燃焼
(ガリガリにはならんといてな)(わがまま男め)



―――

侑士の変態さがあまりない‥
でもさりげなく藤代絢嘉さまに捧げます^^←


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