大学の入学式から1週間。最初はガイダンスやら何やらで忙しかった日々もだいぶん落ち着いてきた。知り合いも結構出来たし講義もまぁまぁおもろい。せやけど、いま一つだけ悩んどることがある。


「名前は何かサークル入っとるん?」
『‥あぁ、新歓の時期だ』
「毎日ぎょうさんビラもろてんけど逆に悩んでもうてん」
『あはは、どこも必死だからね〜』


私はバドミントン、と続ける名前はクッションを抱えながらソファに深く腰掛けとる。今日の夕飯も終わって、ユーシは今風呂入っとる。あいつ男のくせにやけに風呂長いねん。何してんのか知らんけど、ようのぼせんよなホンマ。


「何でバドミントン?」
『うーん、練習見学行ったら雰囲気良かったから‥かな』
「ホンマに?そんだけ?」
『あと‥ビラくれた先輩がカッコよかった』
「名前、下心丸出しやんけ!」
『だってやっぱ期待しちゃうじゃん、そーゆーの!』


ムキになって正当性を主張する名前。まぁ気持ち分からんでもないけどな。俺かて美人な先輩からビラもろたらやっぱ嬉しいし入ったろか、て思う。残念ながら今んとこストライクな人は居れへんかったけど。名前に勧誘されたら入るんやけどなぁ、なんて思とったら後ろから何かに頭殴られた。まぁ何かなんて分かりきっとるけどな、流石にグーは痛いっちゅう話や。


「何やユーシ、殴んな!」
「呼んでも返事せぇへんのが悪い。風呂空いたで、早よ行ってき」
「アカン、今俺の人生を決める大事な話しとんねん」
「お前の人生なんて知るか」
「何やと?ここで俺の将来のお嫁さんが決まるかもしれんねんで!」
「ほう、そしたら俺の親戚になるっちゅうわけやな」
「せや、大事なことやろ?」
「まぁ確かに、可愛えに越したこたないしな」


風呂から上がったユーシが「よっこいしょ」と名前の隣に座る。お前はオトンか。またその台詞がやけに似合うとるんがウケる。

名前の方に目を向けると、俺らの会話に呆れたように溜め息ついとった。あ、バカにしとるな。


『侑士は決めたの?サークル』
「ああ、テニスにしたで」
「ほな俺もテニスにしよかな」
『へぇ、二人ともテニス好きなの?』


名前の質問に、思わずユーシと目を合わせる。んで、少し間が空いてから笑い合う。

そういや、まだ名前には俺らがテニスやっとったこと言うてへんかった。笑いこける俺らを見る名前はポカーンとした間抜け顔。そら意味分からんよな、いきなり。


「名前、俺ら中高ともテニス部やってん」
「しかも結構強かってんで」
『あ、そうなんだ‥初めて聞いた』
「何やもう言うた気しとった、なぁケンヤ」
「ホンマホンマ、あー今の名前の顔おかし!」


笑いながらそう言うたったらものごっつい速さでクッションが飛んできた。さっきまで名前が抱えとったからちょお温い。って何や俺変態みたいやんか、やめとこ。投げた張本人はごっつい形相でこっち睨んどる。可愛えお顔が台無しやで、名前。


『‥あ、そういえばうちの後輩がインカレサークル作るって言ってたよ』
「それアレか、他大学と一緒にやるやつ?」
『そうそうオールラウンドでね、野球したりサッカーしたり』
「なんや楽しそうやな!テニスもするんかな?」
『提案すれば出来るんじゃない?』
「ほな、俺それにしよー」
『じゃあ後輩に言っとくね?』
「おう、頼むわ名前」


名前の一言でアッサリ決めてまうなんて俺も相当単純やな、なんて。でも名前の知り合いならきっとええ人やろうと思うから大丈夫。活動が楽しみや!











(侑士決めるの早いね)(テニスなら美脚拝めるからな)(‥お前そのうちセクハラで訴えられんで)



―――

台詞が多くなってしまった‥


back
- ナノ -