『はぁ〜‥‥』
「どないしてん名前、辛気臭い顔して‥ってコレか」


来週から楽しい夏休み、その前に期末テストの答案返却があるわけで。今日返ってきたテストがあんまりにあんまりな結果で、溜め息しか出ぇへん。何遍見ても点数は変わらんねんけど、ついつい見間違いちゃうかと思て見てまうから大概アホやと自分でも思う。

私の気も知らんと、人のテストを堂々と覗き込んできよる謙也。もうここまで来ると、隠すとかもうどうでもようなる。はい存分に好きなだけ見たって。そんで私を嘲笑ったらええねん。


「またえらい点数とったな、名前」
『もうホンマ世界史嫌い、この世の世界史の教科書と参考書全部燃えてまえばええのに』


自分でも支離滅裂やと思う主張にも、確かに!と力強う同意してくれるから謙也ってホンマええ奴。そこツッコミ入れてくれても良かったとこなんやけど、まぁええわ。

謙也は私の前の席に横向きに座って、改めて私の答案をまじまじと眺めとる。あぁ〜ここコレやったんや、なんて、この丸の方が圧倒的に少ない答案で答え合わせする必要ある?いや、ないやろ。


「っちゅうか、名前、コレ夏期補習組やん」
『ああ〜!謙也それ言うたらアカンやつ!」


この答案が示しとる最悪なこと、それは夏休みに補習受けなアカンっちゅうこと。まぁ曲がりなりにも受験生、中学最後の夏休みは受験の天王山!なんて耳タコくらい聞かされとるけども、何で夏休みにわざわざ学校来なアカンねん。先生達かて夏休みバカンス行ったらええやん。

数日だけとは言え、楽しい夏休み生活にまさかの強制登校やなんて、ホンマついてへん。もっとテスト勉強しといたらよかった。今更なんは分かっとるけど、そない思わんとやってられへん。


「まぁまぁ、そない気ぃ落とすなや!人生終わるわけちゃうし!」
『いや、終わる。私の中学最後の楽しい夏休み人生が終わる』
「ずいぶん大袈裟やな‥よっしゃ、名前にええこと教えたろ」
『えっ何?補習回避の方法とか?!』


謙也が言う"ええこと"に大いなる期待が膨らんだっちゅうのに、んなもんあるかい、と一瞬で打ち砕かれた。人の気持ち上げて落とすとか、最低なやっちゃな自分。

おもむろに、自分のどでかいバッグから一枚の紙を取り出す謙也。それにしてもテニス部の人らって、ようこないでかいバッグ毎日持ってられるなぁ。肩凝りそう。


「じゃーん!」
『うっわ、‥‥ひどっ!』
「ヒドい言うなや!大して変わらん癖に!」


謙也が意気揚々と見せてくれたんは、謙也の世界史の答案。私とどっこいどっこいで、そらもうヒドい点数。うん、もちろん私のもヒドいっちゅうんは重々理解しとる。

せやけど、自分の答案を見せびらかす謙也があんまりにも意気揚々っちゅうか自信満々やから、私もそない落ち込まんでもええんかも、なんて思える。お互いヒドい点数なんは確かなんやけど。


『え、ほな謙也も補習やん、よかったー仲間居って!』
「せやろ?」


大したことあらへんことにも大層なドヤ顔をできるから、謙也はスゴい。話の内容自体はホンマ低レベルなモンやけど、私にとっちゃ一大事なこと。

補習が憂鬱なことは変わらへんけど、仲間が居るってだけでちょお前向きになれる。まして、その仲間が謙也っちゅうんやから尚更。むしろ、それで補習が少しだけ楽しみになってきたから、私も大概単純なやっちゃ。










君がいるだけで
(補習、俺らだけらしいで)(‥ホンマ謙也居ってよかった)



ーーー

色々な意味で心強い存在。笑


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