シャワールームに続く長蛇の列を見て、ため息をついた。汗を流したいけど、後片付けがあるのでゆっくりしていられない。諦めて帰ろうとした時、数メートル離れた場所にプレハブ小屋を発見した。海の家の倉庫か何かだと思ったら、入り口に『シャワーご利用頂けます』と貼り紙がされていて驚いた。向こうのシャワールームはきちんとした建物なのに、こちらは雑然として近寄りがたい。
恐る恐るドアを開けると誰もいなくて、全ての部屋が空いていた。一番端の部屋に入ると、一畳ほどの空間にシャワーと荷物を置くスペースがあった。汚い外観に反して設備は衛生的で、管理が行き届いているのにもったいないと思った。
水着を脱ごうとした時にドアがノックされたので、驚きで変な声が出てしまった。

「唯子、開けてくれ」

聞こえてきたのは大吾さんの声だった。みんなと一緒にいたのに、何かあったのかと心配になってドアを開けた。すると、大吾さんが隙間から強引に体をねじ込んで鍵をかけた。あっという間の出来事に呆然としていると笑われてしまった。

「一緒に入っていいよな?」
「いいけど、他の部屋も空いてるよ?」
「ああ。知ってる」

一人でも狭いのに、大吾さんが入ったせいで圧迫感がすごい。わざわざ不自由な思いをしにくるなんて変な人だ。少し動きにくいけど他に困ることもないので、構わずシャワーのハンドルを回した。

「すぐ浴びるから待っててね」
「ん。ゆっくりでいいぞ」

壁際で腕を組んでこっちを見ていたかと思うと、着ていたラッシュガードを脱いで荷物置きに置いた。

「な、なんで脱ぐの?」
「なんでって、脱がないとシャワー浴びられないだろ?」

確かにその通りだけど、隠されていた体が露わになって動揺してしまった。筋肉に覆われたそれに背中を向けて、頭からシャワーを浴びた。汗と海水でベタつく肌にぬるま湯を当てていると、大きな手が腰を撫でさすった。

「大吾さん、どうし……」

言い終わらないうちに、肩に顎を乗せた大吾さんが唇に触れた。すぐに舌が入ってきて、シャワーを浴びたままキスをした。個室に二人きりという状況にドキドキしているのに、こんなことをされたらその気になってしまう。それとも、最初からその気にさせるつもりだったのかもしれない。唇が離れたタイミングで、再び大吾さんに背中を向けた。

「水着、濡れちゃってうまく脱げないの」
「へえ……手伝ってやるよ」

そう言って、にやりと笑った。普通の下着と同じように留め具を外せば脱げると知っているのに、そうする気はないようで、背後から回された両手が胸を水着ごと揉みしだいた。

「水着、似合ってる」
「っ……本当?嬉しい」

褒められたことに気を良くしていると、水着がずらされて、温かい手が膨らみの先端を摘んだ。

「でも、他の連中もいるのに露出しすぎだ」
「だって海だから仕方な……あっ」

肌を焼く時と海に入る時以外はラッシュガードを着ていたから、水着姿を見せびらかすようなことはしていない。水着自体もよくあるビキニタイプできわどいデザインではないけど、大吾さんには面白くなかったみたいだ。

「大吾さん、怒ってる?」
「別に怒っちゃいねえけど、露出してると、やっぱ目につくだろ」
「気にしすぎだよ」
「気になるんだから仕方ないだろ」

胸から移動した手が水着の中に侵入して、恥骨をなぞった。ぴったり閉じていた両脚を緩めると、すかさず指が入ってきた。

「ここ、好きだよな」
「ふっ……んんっ」

優しく撫でるように抜き挿しされて、腰が揺れてしまう。途中から邪魔になったようで、下の水着は剥ぎ取られてしまった。鍵をかけているけど、他の部屋にいつ人が来てもおかしくない。そんな状況に興奮しているのは、大吾さんも同じだった。


「はぁっ……我慢できねえ」

前に移動した大吾さんは、既に水着を腰まで下げて、大きくなった性器を露出していた。肩に掴まるように言われてその通りにすると、大吾さんが太ももを抱えて体を持ち上げた。驚いて両腕を首に回すと、抱きかかえたまま挿入してきた。

「嘘っ……!?入ってる……!」
「キツいな……大丈夫か?」
「んっ……へ、平気……」

いつもと違う体勢のせいか、中に入った大吾さんを強く締めつけてしまう。動いてもいいかと聞かれて、肩に顔を押し付けて頷いた。太ももを支える手が移動して、お尻に添えられた。ゆっくり動いて出し入れできることを確認すると、規則的に体を揺さぶり始めた。

「唯子……気持ちいい」
「あ、あっ、大吾さんっ」

体重を支えながら動いて、相当体力を使っているはずなのに、衰えるどころか速度が増している。流れでこんな体勢になって、どうしていいかわからない私は、大吾さんの動きに身をまかせた。


「兄さん、大吾を見なかったか?」
「大吾ちゃん?そういや姿が見えんなぁ」

聞き覚えのある男の人の声が、二人分。息をのんで、大吾さんと顔を見合わせた。声の主は、桐生さんと真島さんだ。話し声と一緒に砂を踏む足音も聞こえてきた。大吾さんを探しているということは、この中を確認するかもしれない。もしそうなったら、うまくやり過ごせる自信はない。
どうしようと目で訴えると、大吾さんがゆっくりと腰を引いて、吐息混じりの声が出てしまった。さすがにまずいと思ったみたいで、今度こそ動くのを止めてくれた。


「スイカ早食いしたせいで下痢したんやろ。図体でかいくせして中身はガキや」
「言い出しっぺのアンタが一番ガキじゃねえのか?」
「あ?うっさいわ」

私の知らないところで、スイカの早食い大会が行われていたらしい。こんな状況では笑えないけど、真島さんに挑発されてスイカに噛りつくみんなを想像すると面白かった。
桐生さんと真島さんは、その後も幼稚な会話をしながら遠ざかっていった。

「大吾さんの馬鹿っ……」
「焦ってる唯子がかわいくて、つい」

二人の気配が完全になくなると、今まで以上に荒々しく動き出した。しっかり体を支えているけど、上下に激しく揺さぶられると体勢が不安定になって、落ちないように必死でしがみついた。

「あぁ、すげえ締まってる」
「やぁ……っ!」

奥の方に当たって気持ちいい。だけど体に力が入るせいか、いつものように感じることができなくて、もどかしい。

「大吾さん、あの」
「悪い……もうっ……出る」
「そんなっ、あ……!」

後ろから挿れてほしかったのに、遅かった。中途半端なところで終わってしまって、不満が顔に出ていたと思う。大吾さんは息を切らして申し訳なさそうにしていた。

「俺だけ気持ち良くなって悪かった」
「……」
「夜にちゃんとするから指で我慢してくれ」
「でも……そろそろ帰らなくちゃ」
「な?いいだろ」

放たれた白濁で濡れたそこを、ごつごつとした指がなぞる。我慢ができなくなった私は、再び声を漏らして大きな体にしがみついた。


2018.10.3

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