寂しがりの獣たち


先月から同居を始めた恋人は、いつも帰りが遅くて、休みの日も不規則だ。でも、私と過ごす時間を大切にしてくれる。好きな人と一緒にいられる生活に不満はないと言いたいところだけど、一つだけ気になることがある。

性行為は何度もしているのに、私は峯さんの性器に触ったことがなかった。そういう行為をするのは好きでも、触られるのは好きじゃないのかもしれない。いつか彼の真意を確かめたいと思っていた。
そして今日、珍しく夕飯の時間に帰った彼が、明日から二日間休むと言った。つまり、夜更かしをしても大丈夫ということだ。内容が内容なので、面と向かって聞くことができなかったけど、これはまたとないチャンスだった。


気合いを入れて寝室に入ると、ベッドの上の毛布が体の形に盛り上がっていた。それを見て、彼と初めてした時のようにどきどきしてきた。中にもぐり込んで腰に抱きつくと、脚の間にそっと手を伸ばした。もう少しで触れるというところで、峯さんが私の手を握って止めた。

「何してる」
「やっぱり起きてたんですね」
「したいなら言えばいいだろう」
「そうじゃなくて…」

毛布が捲られて、体の向きを変えた峯さんがキスをしてきた。唇を舐めた舌が、今にも口に入りそうだ。もちろんキスは好きだけど、このままではいつもと同じになってしまう。肩に手を置いて、ゆっくり離れた。

「なんなんだ」
「峯さんのここ、舐めていいですか?」
「断る」
「そんな…」

峯さんは元の体勢に戻ると、再び毛布をかぶってしまった。私もそれを追いかけて中に入る。勇気を出してお願いしたのに、速攻で却下されたことにショックを受けた。でも、このくらいは想定内だ。

「いつもしてもらうから、今日は私が」

怒られるのを覚悟してスウェットの中に手を入れると、峯さんは抵抗しなかった。下着越しに触れると太ももがぴくりと動いて、柔らかい中心部分が少しずつ硬くなっていくのがわかった。

「唯子…よせ」
「でも、大きくなってます」
「触られれば誰だってこうなる」

私には男性の常識なんてわからない。そう言われたところで、そうですかと諦めるわけにいかなかった。
スウェットと下着をずらして形を変えたものを取り出すと、峯さんとボディソープの混じったにおいがした。唇を近づけると、黙って見ていた峯さんが『待ってくれ』と言った。

「そんなことしなくていい」
「私はしたいです。だめですか?」
「いや…」

拒否されているわけではないけど、承認してもらった感じでもない。よくわからない返事だった。


片手で軽く握って、扱きながら舌を這わせる。敏感なところを指で擦ると、全体が本人の意思に関係なく動いて、面白いと思った。

「ぴくぴく動くんですね」
「…焦らしてるのか?」

少し扱いては動きを止める私を見て、峯さんがもどかしそうに息を吐いた。焦らしているのではなく、適当な力加減を保ったまま動かすのに慣れなくて、すぐに手が疲れてしまうのだ。
手を使うのを諦めて、下着から出した時よりも大きくなったそれを口に含んだ。

「唯子…うっ」

気持ちよさそうな声が聞こえてくる。うまく言えないけど、挿入している時のあえぎ声とは少し違っていた。峯さんが感じている姿をもっと見たいと思った。

唇をすぼめて出し入れし始めると、私までいやらしい気分になってきた。冷静に考えてみると、仰向けの無防備な峯さんを襲うという状況に、興奮しないわけがなかった。
そのまま続けていると自然に唾液が分泌されて、動かすたびに卑猥な音が出た。


「出そうだ」

数分間ずっと同じ動作を続けていたので、口を開けているのが辛くなってきたところだった。峯さんの呻き声が聞こえて、できる限り速く動かした。

「うっ、く…!」

限界を迎えたそれが、膨張して弾けた。咥えたまま目線を上げると、目を閉じて刺激に耐える表情が色っぽくて、どきどきした。
舌に絡みつく精液を唾液と一緒に飲み込むと、喉がごくんと鳴った。

「ん…嬉しいです」
「まったく…」

精液を飲み込んだ私を見て、峯さんは明らかに引いていた。きっと理解してもらえないけど、初めて味わえた満足感で胸がいっぱいだった。


体が火照って熱い。寝間着の胸元のボタンを外していると、太い腕が私を引き寄せた。隣へ寝転がると、下着の中に指が入ってきた。自分で確かめてないけど、峯さんが小さく笑ったので、そこがどんな状態なのか察しがついた。

「俺の×××を舐めたせいか?」
「そう…です…」

峯さんには似合わない、上品とは真逆な言葉を口に出されて、動揺した。違うと言いたかったけど、顔を見つめられて強がっていられない。それに、言い逃れできないくらい濡れているのが、秘部から聞こえてくる音でわかった。

「ひゃ、あ…!」

窮屈そうに動いていた指が離れて、濡れた下着を片手で器用に脱がせた。指が侵入してくるのと同時に、大きな体が屈められて、充血している突起へ口付けた。全く躊躇のない動作に驚いて顔を上げた。

「嫌か?」
「…してほしいです」

私も同じことをしていたのに、峯さんのきれいな顔がそこに触れるのを直視できない。何度行為をしても、こうして愛撫されるのは恥ずかしかった。

「気持ちいい…っ」

温かい舌が、一番敏感なところを往復する。舌で刺激しながら指も一緒に動かされて、あまりの気持ちよさに腰が浮きそうになる。

「んん…っ!!」

良いところを掠めるだけでも気持ちがいいのに、指が折り曲げられて、そこを優しく重点的に擦った。

「あ!峯さんっ…!」
「どうした?」

ゆっくりした動きで執拗に責められて、意地悪な問いかけに返事をする余裕もなかった。

「〜〜っ!!」

声にならない声をあげて達した直後、体内に埋まった指が抜かれて、尿道から飛び出したものが短く線を描いた。それが峯さんの顔にかからなくてよかったと、心から思った。

「あ…っあぁ…!」
「これであいこだろ」

下半身が色々な液体でぐちゃぐちゃだし、腰が震えて立ち上がれない。全然あいこじゃないと文句を言いたかったけど、上手く言いくるめられる気がして、黙っておいた。
挿入していなくても、結局は峯さんに主導権を握られてしまった。

「次は…峯さんをへなへなにするから…」
「そうか。期待してるよ」

ふっと笑った峯さんが『いつになるかな』と呟いたのを聞いて、私は再び新しい目標の達成に燃えるのだった。


2018.7.17
タイトル:夜半

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