捧げ物 | ナノ


〜またいつか、どこかで〜


朔弥と克悠は、林の中を歩き回っていた。

「……見つかりませんね」
「でも、気配はあるんだろう?」
「そのはず、なんですが……」

それぞれ愛用の武器を携え、警戒を緩めることなく会話を交わす。
辺りを見渡しながら長いこと歩いているが、標的は一向に現れない。
妖怪討伐の依頼書にあった場所は確かにこの林の筈だと二人は記憶を照らし合わせ、何度も出した同じ結論に辿り着くのだった。

「……少し、待って下さい」

半歩前を行く朔弥が、数度目かの制止をかける。
克悠は軽く頷き歩みを止め、朔弥の邪魔にならないよう護衛の意味も兼ねて一歩下がった。

立ち止まって目を閉じた朔弥は、その神経を限界まで研ぎ澄ませる。

(……北東の方向、距離はやや近く、数は――)
「――っ!!」
「!」

弾かれたように顔を上げ、両手の合口をきつく握りなおす朔弥。
そこに尋常でない気配を感じたのか、克悠も己の銃を構える。

そのまま二人は、会話を交わすことなく全速力で地を蹴った。




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