短編集 | ナノ
練習あるから、会えない。ゴメン


いいよ、気にしないで! 頑張ってね


あ、けど、プレゼント届くと思うから、家にいて


え、届く?


宅急便。18時から20時の間ね


なんかすごい(笑) 楽しみにしてるね






なんてメールを交わしたのは、一昨日の話である。付き合い始めのころは毎日メールをかわすこともあったのだが、最近は気が向いたときに、程度である。クラスが同じで、毎日会っているせいかもしれない。まあ、今日から冬休みに入ったわけなのだけれど。


「あきー、お風呂、わいてるわよ」
『今日は最後でいい』
「あら、何、どうしたの?」
『荷物が届くから、それまで勉強してる』


それだけ言い残して、階段を上って自室にこもった。
勉強をする、といった手前、明日から休みだったが学生鞄の中から教材を取り出し、シャープペンを握った。しばらくすると、無音の部屋の中にカリカリ音が響き始めた。


最近、冷え込みがひどかったせいか、外には雪が降っている。そのせいもあってか、シャープペンを動かす以外は何も聞こえなかった。


バレーを続けてたら、私もまだ練習してたのかな。孝支と2人で帰っていたのかな。


なんて、ね。


たまにはいいかな、と、勉強の合間に見て励みにしているアルバムを取り出した。小学生のころから少しずつためてきた写真。その多くを占めるのがバレーの頃の写真である。結や澤村とは随分と長い付き合いだ。


パラパラとめくっていたアルバムはしかし、あるところから同じ色になった。透き通ったきれいな色。烏野高校の文字が入ったユニフォーム、同じ校章が入った制服。はやりの服を着て張りきったデートの写真。
寂しいと思ったときは、いつも孝支がいてくれた。


『ありがとう、』


ふと漏れた言葉のすぐ後に―――というか、図っていたのではないかと思うほどタイミングはバッチリだった。ピンポーンという音が鳴り響いた。
部屋の扉を開ければ、「はーい」とお母さんが玄関へ向かっているのが分かる。


『ちょっと待って、私が出る』


別に誰が出ても同じなんだろうけど。けどそんなことはどうでもよくて。お母さんが苦笑しながら台所へ戻っていく。
ガチャリと扉を開け、宅配でーす、という声を聞いた。あれ、どういうこと。


「お届け物にまいりましたー」


にこりと笑うその人は、透き通ったきれいな髪だった。
それまで見ていたアルバムのせいもあり、驚きと嬉しさで何も言葉がでない。


「メリークリスマス、あき」


不意打ちだ。孝支のばか。涙が出そうになるのを必死にこらえる。
やっと出た言葉は、なんだかどうでもよいものだった。




ハンコはいりますか?



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