なんだかいつもと空気が違うなって感じることってあったりする。例えば誰と誰がつき合ったとか、別れたとか、教室に入った時に感じるちょっとした違和感。触れたいけど触れちゃいけないような話題の時が多いかなあ。
…それを今私は感じていた。
いつも通り朝の支度をして、いつも通り食堂に朝ご飯を食べに来ただけなのに、あいさつしながら食堂に入った瞬間、空気がざわついた気がしたのだ。
心なしかいつもより感じる視線も多い気がする。

「…?」

私何かした…?
バイキング形式の朝ご飯を盛りながら、頭の中を心当たりが駆け巡る。
昨日こっそり跡部のジャージを羽織って決めポーズして遊んでたところを誰かに見られた…?それとも跡部のタオルを回収したあとにおいを嗅いでいるところを見られた…?
だめだ、心当たりがありすぎる。
とりあえず誰かに何か知ってるか聞いてみなきゃ…ってオレンジジュースを注ぎながら見渡したら、我が氷帝テニス部幼馴染ズを発見した。目が合った。そらされた。あ!絶対何か知ってるでしょこれ!

「なんで今目そらしたのー宍戸ぉ岳人ぉ」
「お、おはよう」
「はよー」

ご飯のトレイを岳人の隣に置いて、そのまま座る。
なんだか気まずそうにそわそわしてる宍戸と、にやにやしてる岳人。
さあ知ってることを洗いざらい吐いてもらいましょうか!

「なんか変な空気じゃない?なんで?私何かした?」
「何かってなあ、」

顔を合わせる二人。オレンジジュースを飲みながら続きをうながしたら、

「お前と日吉がキスしてたってウワサが広まってんだよ」
「がふっ!!」

ちょっと噴いちゃったじゃん!

「きたね!」
「なんで!?してないけど!?」

宍戸が渡してくれたふきんを使って汚したところを拭きながら全否定すると、二人は「だよなあ」って頷き合った。ちょっと考えれば分かるでしょ!?

「うそだとは思ったけどよ」
「一応本人の話も聞かねーとな」

っていうかなんでそんなウワサが広まってるの…!?そんでここにいる人達だいたいこの話知ってるってこと!?

「ねえこの話誰から聞いたの?!」
「俺は切原だぜ」

と、宍戸。

「俺も俺も。立海の一年坊主な」

と、岳人。
はいもう決まりです。ガタン、立ち上がって黄色ジャージを探す。いた。

「きーりーはーらーくーーーん」

ビクッと跳ねた背中を見逃す私ではないわ!
すかさず駆け寄って、席から立ち上がり逃走をはかろうとした切原くんの両肩をつかんでグッと押し戻し席に座り直らせる。そのまま空いている右隣に座って、

「ちょっとお話ししよっか」

語尾にドクロマークがついているに違いない。

「おはよう、マネージャーさん。うちの赤也が何かしたのかい?」
「赤也貴様マネージャー陣に迷惑をかけたのか!」
「赤也、ゆっくりでいいから話すことを勧める」
「こりゃ四面楚歌ぜよ」

しめんそかってなんスかー?!??

切原くんの叫び声が食堂に響き渡ったってわけ。