「なあお前少し太ったんじゃね?」

雑誌を眺めながらふわふわでとろけそうなパンケーキに思いをはせていた時、ふいにおそ松が言った。「は?」そんなことないですしの気持ちを一文字に込めて返したけど、私の指がぴくりと動いたのをおそ松は見逃さなかったらしい。

「あ〜やっぱりな〜。なんだかこのあたりがたくまし〜くなったような気がしたんだよ」

そう言いながら私の脇腹をつんつんつついてきたおそ松はにや〜と気持ち悪い笑みを浮かべていたので、私はせっせと雑誌を丸める。

「おそ松、ちょっと頭下に向けて」
「? こうか」

そして目の前にあらわれたおそ松の頭頂部に向かって腕を振りかぶりそのまま振り下ろし結構な勢いをつけてそのつむじを雑誌の角で殴った。ざしゅっ。

「じっ・・・時間差ぁ!時間差攻撃はねーだろ!太ったこと指摘されたくらいで!雑誌めり込んだわ!」
「めり込ませるつもりで殴ったからね」
「なんでドヤってんだよいってえよ〜あ〜これは頭がい骨粉砕したわもう二度と働けない体にされちまったわ名前に一生養ってもらわないといけないわ〜」
「あっそ」

おそ松の頭から雑誌を抜き取って、さっきのパンケーキのページを探す。えーと確か真ん中よりは後ろだったよな・・・。もくもくとページをめくり続ける私を見て自分を養う気がないことを判断したのか、おそ松はごろごろ転がっていたのをやめてひとこと「チェッ」舌打ちしたあとほふく前進でずりずりと近寄ってくる。

「なあなあでもさあ」
「体重の話はやめて」
「ちげーって。お前おっぱいもおっきくなっただろ。おっぱいも」

両手を顔の高さまで上げてわきわきと動かすおそ松の顔はいやらし〜くゆがんでいた。ドストレートな下ネタにウワーとドストレートに引きながら私は雑誌をめくる手を止める。

「おそ松、私のスマホとって」
「なんだよ話の腰おっちゃってさ。ほらよ」
「警察って110番だよね」
「えっちょっともしかして俺を通報するわけじゃないよな!?」

さっと私の手からスマホを奪い返したおそ松を見れば冷や汗をかいて少し焦っているみたい。「わいせつ物陳列罪ってとこかな・・・」「まだ俺なんも出してねーよ!」「まだって何まだって!」「それはこれからのお楽しみだろ!」「存在自体がわいせつ物ってことでいいよもう」「えっ」「なんで照れんの」不毛なやりとりを続けながら、私はスマホを諦めてまた雑誌をめくる。パンケーキパンケーキ・・・。

「まあしかし太ったのが事実だとして」
「まだ言うか」
「俺はとても効率のいいダイエットを知ってるんだな〜」
「えっ」

思わず顔を上げてしまった私を見て、おそ松は満足そうににやにやと笑う。あっなんか悪いこと考えてる顔だわこれ。軽率にくいついちゃったけど、嫌な予感しかしないやつだわこれ。

「言っとくけどお金なら無いよ」
「誰が金の亡者だ。まあ安心しろ、このダイエットには金がかからない」

へえ〜と嫌な予感はおいといて前のめりになっちゃってる自分に気づくけど、お金もかからないダイエットってすごく魅力的だよね!?おそ松印っていうのがまあとてつもなく引っかかるけど、話だけ聞いてもいいんじゃないかな。ちょっとわくわくしてきた私を見て頷いた後、おそ松は私のベットを指さした。

「じゃ、まずは寝て」
「なんで」
「いいからいいから!楽して痩せたいんだろ〜?」
「否定できない・・・」

仕方ないなあっておそ松の指示通りベットに横になる。「仰向け?」「おう、それでいいぜ」ここからどうするんだろ〜って天井を眺めてたら、視界におそ松があらわれた。そして足に重い感覚。おい。

「よし」
「よしじゃないんだけど!なんであんたが上に乗ってんの!」

起き上がろうとするけどうまく力が入らない。

「何ってそりゃダイエットのためだろ」

こともなげに言うおそ松の顔がすべてを物語っていた。

「あんた今すっごい欲にまみれた顔してるけど」
「いやあダイエットだってダイエット」
「何ダイエットなのこれ」
「そりゃセッ〇スダイエッ「通報!」

スマホに手を伸ばしたけどすかさずおそ松の足が伸びて私のスマホは遠くに蹴り飛ばされてしまった。こ、こんにゃろ・・・!にらんでやるけど「お、わりといいなその表情」逆効果だったようです。一瞬でもこいつを信じた私がばかだったわ〜。は〜とため息を吐く私にまたがったまま、おそ松はパン!と手を合わせた。

「なあ頼むよ〜!俺とセッ〇スしよ!な!」
「うわ〜」
「先っちょだけ!先っちょだけでいいから!」
「童貞はみんなそう言う」
「どっどど童貞ちゃうわ!」

ふうん、と私の足にまたがってるおそ松の股間に膝を押し付ければ、「おふぅっ!」あからさまにびくりとしたおそ松と目が合ったあとサッとそらされた。「ど、童貞ちゃうわ」さっきより声がしりすぼみですよお兄さん。私の視線に耐えられなくなったのか、おそ松は「あ〜〜〜!」と叫びながら頭をかきむしって、私の顔の横に両手をついた。思ったより顔が近い。

「いいから!名前、俺とセッ〇スしてくれ!」
「い、や、だ!」
「なんでだよ〜!こんなに頼んでるのに〜!」
「なんっでそんなにセッ〇スしたいのあんたは!」
「俺長男だろ!?兄弟の中で1番に童貞捨てるべきなのは俺だと思うんだよ!」
「やっぱ童貞なんじゃん」
「・・・、も、問題はそこではない」
「いいからはやくどいて」
「俺は、名前とセッ〇スしてえの!」

どうせセッ〇スしたいだけのいつもの口から出まかせだろうとおそ松の顔を見てから、ちょっと後悔した。真っ赤な顔で汗もにじませちゃって、私の顔の横で震えてるように見える手はいったいどういう感情のあらわれなんだか。

「おそ松、ちょっと力抜いて」
「お、おう」

体を起こして、おそ松の肩に手をかける。そのままいっきに体重をかければ、おそ松はぼふんとベットに埋まった。

「えっ」

つまり、形勢逆転、おそ松にまたがったのは私だ。

「名前、こっこれはどういう、」
「いいよ、セッ〇スしてあげる」
「マジかよやりィ童貞一抜けフゥ〜!」
「ただし主導権は私ね」

ブラウスのボタンを外していく。「そっそんないきなり!」って今更慌ててみせるおそ松の顔に脱いだブラウスを放り投げた。

「うわっぷ」

なにすんだよ、と顔からブラウスをとったおそ松が、ごくりと息を飲む音がしっかりと聞こえて思わず笑っちゃう。

「お、おおおおおっぱおっぱおっぱお」
「おっぱいね」

しっかり楽しませてよね〜?
おそ松の耳元に唇を押し付ければ、興奮したおそ松に名前を呼ばれて、吐息をねじこまれたのだった。