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「えへへ…似合うかな?」

 ドキドキと心臓が高鳴る。
 家の自室で彼氏である竜輝に思い切って購入した、淡いピンク色の生地に薄紫の金魚が刺繍してある浴衣を見せびらかしている所だ。
 竜輝はボッと顔を真っ赤にしてそっぽを向く。こういうときは大抵照れていて、濃い藍色の髪さえも真っ赤にしそうなくらい顔が真っ赤。
 そして、ごにょごにょときちんと聞いていなければ聴き取れない声で「似合う」と経った一言。
 竜輝はどんだけ初心なんだろう。しかしそこが好き。
 私はさらさらと胸まで伸ばしているオレンジ色の髪の毛を、浴衣を一回ベットの上に置いてポニーテールにする。あ、お団子のほうがいいかな?まぁいいや今日はポニーテールで。

「う、兎月…」
「ん?なぁに?」

 結び終わった後、竜輝に名前を呼ばれて見つめていればボオッとさらに顔を真っ赤にさせた彼。

「どうしたのー!?」

 慌てて彼に寄って、話しかけてみれば火がでそうなくらいだった。全体が真っ赤。黒色のタンクトップと、迷彩色のハーフパンツさえも赤くなりそうな、そんな感じ。
 竜輝はそんな真っ赤っ赤でも何でもないと首を横に振る。心配すぎて今日の夏祭りにいけないよ…。熱中症だったらどうしよう。竜輝が外で倒れたらどうしよう。
 あわあわと慌てていれば、バタンッと突然部屋のドアが開いて、吃驚してぽかんと目を開いていれば私の兄、和真お兄ちゃんがいた。抹茶より濃い緑色の浴衣を着ている。

「うづきー!お兄ちゃんと夏祭り行こう。こんな奴置いていくんだ。さぁさぁ早く着替えて!」

 ぴょんぴょん跳ねている茶色の髪の毛がどんどんこちらに近づいてきて、うぎゃーと心の中で叫んで、「竜輝と行きたいの!」と言っても私のことばを無視するお兄ちゃんに捕まるわけも行かず、竜輝の体に抱きつく。
 竜輝は一瞬吃驚したように体が跳ねたが、すぐに私を抱き返してきてくれて、お兄ちゃんを見た。

「すみません。兎月は僕と一緒に行くんです」

 きゅん、と心が跳ねたのは気のせいじゃない。

「りゅーきー!好き好き大好きぃ!」

 さらに強く抱きしめ返せば、竜輝は嬉しそうな顔を見せた。お兄ちゃんはプルプルと震えて、バッターンとすぐに倒れこんだ。


2010 08 14



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