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「小田山より大砲が着弾しました。」
人を斬って、肉を裂いて、内臓を変異させる不快音が振動で伝わる。
もぅ手の感覚が無い。
俺自身が刀になった様なものだ。
轟音と共に崩れる土塀。
飛び散る砂ぼこり、断末魔の叫びと鮮血。
「朱雀隊、先攻。」
北に上る途中、目にした桜が美しかった。
総司と共に見たのも桜だった。
そして、それが最後だった。
山口はふと目を覚ました。
(この時期に、あの時の夢を見るとは…)
むくりと上半身をお越し手の甲に水の感触がして、そちらを見ると水滴が落ちていた。
不審に思い天井を見上げると頬をたどり、水が流れる。
左手で拭き取ると自分が涙を流していた事に、気がづいた。