目を開くと、緋色の褥が目に入った。
“あぁ…夢か‥”
まだ覚醒仕切ってない頭の中を整理する様に、左手で額を触れる。
“もぉ・・遠い昔に捨てた己と大事に思っていた幼い彼(か)の者の記憶など。何故いまさら…”
頭の中の映像へのわだかまりを払拭するべく起き上がろとしたが躰が動かないのに気付き、その原因を見ると腹回りに腕が回されていて、肩に背後に居る人物の吐息を感じた。
気だるい躰を動ける範囲内で動かし、自分を抱き続ける人物を眺めた。
“物好きな人だ。”
そう思いながら長い髪で隠れた顔(かんばせ)を見る。
“役者の様に美丈夫なのに何故こんな所に・・”
整った顔に惹かれて髪を撫でる様に梳くと、突然梳いていた手を掴まれ引き寄せられ抱きしめられる。
「起きておられるのでょ?」
自分を引き寄せた相手の胸に手をつく。
「もう少し寝かせくれ。」
「早く女子(おなご)と夫婦(めおと)になれば、このような眠室(ねむろ)に足を運ぶことも無いでしょうに」
「女は面倒だ。」
「だからって、衆道でもない方が陰間を利用するのはどうかと。」
「細けぇこと気にするな。」
言葉を続けながら、会話をしていた若衆の左頬を撫でる。
「お前、身請けの良い話が来てるのに断ってるらしいじゃねぇか。」
ふっと男から視線を外す。
「早耳ですね。」
「下男が噂してたのをちょいとな」
「私の言葉より下男の言葉ですか。」
「お前ぇは自分の事となると話せねし、かと言って教養が無いわけでもねぇ。」
「恐れいります。」
男の手を優しい仕草で避ける。
「つれねぇな」
「お戯れを」
男は息を吐いた。

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