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ほんとの、話をするね。
私には宝物がある。
大切な人の形見。遺していった、最後の面影。
赤司には悪いことしたなあ、と思う。
“全部、覚えてる”なんて言ったらどんな顔するんだろう。
怒るかな? ううん、赤司は優しいからきっと怒らないだろうな。
私は、黒子くんはもういない、って知ってる。
精神的にはまだまだ安定してないけど、黒子くんのことを忘れたりするわけないよ。
ただ、認めてしまったら。黒子くんがいないことを認めてしまったら、もう私はきっと生きていけない。
大好き、大好きだよ、黒子くん。
私は寝る前に必ず、綺麗にカバーがかけられたノートを読む。
○月▽日
赤司くんから借りた花言葉の本を思い出しました。
常磐さんにはいつか21本の薔薇を。
唯一、黒子くんの面影。
黒子くんの、日記。
それを読んで、私は赤司から借りた本を読んだ。
一ヶ所だけを、何度も。もう、暗記したから明日には返すけどね。
と、ノートを閉じて布団を被る。
そして今日を振り替える。
今日は泣かなかったし、手首も切らなかった。
今日はまだ安定してた。良かった。
実際、私の精神は不安定すぎて私にもコントロールが出来ない。
まだ、黒子くんがいないことは認められない。
ほんとの話をするね。
私ね、―――――。
20121217
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