秋が来て、 冬が来て、 春が来て、 夏が来て、 秋が来て、 冬が来て、 春が来て、 また、夏が来た。 あの後、市丸隊長の死体が見つかった。 真っ赤な着物を抱き締めて、静かに亡くなっていた。 あの夜、乱菊さんが抱いていた着物だった。 市丸隊長が乱菊さんに贈ったものだと言うのは気付いていた。 討伐の日、京楽隊長のようにそれを羽織って討伐に出たことも知っていた。 そしてその着物は、市丸隊長の胸の中でその役目を終えたのだ。 「お久しぶりです。隊長、松本さん」 2人でよく見ていた桜の沢山咲く場所。僕が、最後に隊長に会った場所。 「もうすぐ、夏も終わります」 そうしたら、お2人の誕生日ですね。 最後に隊長が座っていたところに腰を下ろして一人言のように語りかけた。 桜も散った、葉桜に向かって。 「来世こそ、」 手に持っていた酒と干し柿を傍に置いて、立ち上がる。 「その時にはきっと、笑って永遠を誓ってください。」 貴方方が寄り添って歩いた、桜の下で。 ――――今、【三】の字は僕の背中にある。 20120831 end |