陸。
「貴方のせいだそうですね。うちのにちょっかい出したって馬鹿は」
「は!?え、ちょ、金棒振ってくんなよ!!」
「ただでさえ地獄は人手不足に悩んでいるというのに有望株潰すような真似されちゃ困るんですよ」
「何それ知景ちゃんのこと言ってんの!?」
金棒を振り回す鬼灯さまと、必死に避ける白澤さんを遠目に見ながら苦笑する。
――――あの後、結局吐かされてしまって。休日と言うこともあって自由のきく鬼灯さまは即桃源郷へ。
仕事の余裕もあったので私も付き添いで。
「(私に隠し事ですか、なんて)」
真っ直ぐ、見据える目。
囚われたら最後、逃げられない。
あの目で、鬼灯さまにそんなこと言われても秘密にしておけるわけがない。
流石というか何というか、部下のことをよく理解してらっしゃる。
「知景はうちのです。そっちには行きません」
「知ってるよ!!ばっさり振られた後でお前が傷口に塩塗りこみに来るなよ!!だいっきらい!!」
「大体、貴方如きが私の補佐を出し抜こうなどと…恥を知れ」
「僕は神獣だぞ!!!!」
ここまで牽制かけてくれたら白澤さんの絡みもなくなるだろうな…流石鬼灯さま。容赦ない。
そりゃ確かに、天国と地獄のどちらが良いかと聞かれたらやはり天国のほうが良いんかもしれないけれど。
でもやはりここで何十年と働いて、鬼灯さまの補佐としてやってきて、仕事はハードで辛いけれど、鬼灯さまの傍を離れるのは、嫌だ。
地獄の方が居心地が良い。
誘惑ユートピア。
(私の理想郷は、地獄だ。)
20140205
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