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- ナノ -
007






まさかの。

気付いてしまった事実に、狼狽する。
え、何で私が怒られてるの…?



「…先輩…?」

「……別に」

「え?」

「別にええねん」

「………」



あー…この感じは。なるほど。





固い指の腹が首筋を撫でて、次の瞬間には。








――――噛み付かれた。




「すーちゃん…!!!」



悲鳴に近い桃井ちゃんの声に部員が一斉に振り向く。

手を降って大丈夫だと示す。喉元を噛み付かれてるから下手に声は出せない。

そのままその手で先輩の頭に手を回して、撫でた。泣いた子供をあやすように。



「…っ、」



噛み付かれた歯が一瞬離れる。

すかさず首を押さえて再犯防止。指で触れると微かに歯形が残っていた。



「すみません、お詫びに何か奢ります」

「……ワイ、そない簡単やないねんけど」

 ・・・・・・・・・
「過度なスキンシップ以外なら、何でもしますよ」

「恋愛感情なんか持ってへん」

「世の中には恋愛感情はなくても過度なスキンシップを取ることがあると聞いたので」

「アホか、んなことせんわ」

「すみません」



笑ってあやす。頭を撫でるこの手を先輩は払おうとしなかった。




――――フランツ・グリルパルツァーは、キスの格言で「腕と首なら欲望」と言ったらしい。


そして以前、キスの格言の話を先輩としている。

つまり、首に噛みついたこれもきっとそういう意味だ。



「…来週も、桐皇に来い」

「差し入れ持ってきますね」



不機嫌の理由は私にあるらしい。




主将をすると言うことは、大きなプレッシャーと大きなストレスに悩まされる。それの対処のしかたは中学のときに身につけた。

赤司くんが良い例だ。あの人はストレスに弱いのに自分からストレスに突っ込むような人。




人それぞれだけど、先輩の最近のストレス発散は私との会話らしいと桃井ちゃんから聞いている。

桃井ちゃんのデータは正確だ。だから、その解析もその通りなんだろう。
少なからず好かれているのだと知って、私は嬉しい限りだ。









先輩の欲望は、出来る限り私がここにいることのようだ。






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