003
そこからちょいちょい顔を出すようになって、今がこれだ。
今吉先輩は格好良いと思う。開眼したら死ぬ。イケメンすぎて死ぬ。
バスケも上手いし、プレーを見るも好きだ。
一番好きなプレーは青峰くんなんだけどそこはまあ置いといて。
なのに性格が悪い。
雰囲気かわいい言うな妖怪!なんて言い返した日には、やたら良い声を駆使して耳元で囁かれたりなんかするのだ、拷問に近い。
「なーに考えてんの?」
「べっつにー?」
後ろから聞こえた声に適当に返事を返す。
声聞いたら誰なのかくらい振り向かなくても分かる。
「今日、ポニテかいな」
「桃井ちゃんとお揃いですよ」
今日の髪型はポニーテール。
桃井ちゃんとお揃いにしようって決めた髪型だ。
「ふうん」
「どーかしました?」
ちょいちょい、と私を手招きした先輩になんの疑いもなく近づくと。
顔が、近付いた。
「ひゃわ…っ!」
かぷり。
口から出た声はやたら上擦った、甲高いもの。自分の口から出たのが信じられなくて、慌てて口を押さえた。
先輩に、うなじを甘噛みされた!
「自分、雰囲気かわいい割にはうなじ綺麗やなあ」
「ッ!馬鹿!!」
なんてことするんだ!
恥ずかしさで浮いた熱で顔が熱い。
先輩はにやにやしながら私を見て満足そうな顔をすると練習に帰っていくのだ。
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