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「え。今日誕生日なんですか?」





――――6月3日。


梅雨入りした東京で今日は雨が降らなかった。




先輩と約束をして、遊びに出かけた。
ようやくテストから解放されてたし、天気も悪くないからか気持ちも軽い。


今日はカーキのショートパンツにトレンカに花柄タンクトップの白シャツ、ストラップサンダル。

ゴテゴテしたものは苦手だし、何より先輩が好まない。




「そや」

「え、じゃあマジバ奢ります」

「プレゼントがええ」

「今日言われて今日買えるほど高校生のお財布は緩くないわ」




けらけら笑う先輩の脇腹を殴る。

プレゼントって言っても500円くらいしか余裕がない。



「じゃあ、自分一旦家帰り」

「は?」

「トレンカ、脱いでや」

「はあ?」

「ガラが悪いで、栖条」

「伊達に青峰くんの女版って若松先輩に言われてません」





トレンカ脱げ、ってどういうことだ。

今日は確かに私の家に近い。というか、徒歩で行ける距離での待ち合わせだった。




「それ、プレゼントでええよ」

「……?」




それ、って、つまり、なんだ。


生足見せろって…こと?







――――…





「なんべん見ても生足や」

「あんたが言わなかったら絶っっっっ対しませんよ」

「(ワイの言うことは聞くんやな…)」





金欠だった。

金がなかった。

だから、タダで済むなら嬉しいだけだった。




トレンカを脱いで、外では久しぶりに素足でショートパンツを履いた。




「足、出せばええのに」

「嫌です、公害レベルです」

「青峰が唯一褒めとったで」

あんたら人がいないところでなんて話してんですか




男って怖い。




「褒めてんで?」

「そういう問題じゃないです」

「雰囲気かわいいくせに足とかうなじとか、部分限定で綺麗なんホンマ顔乙」

「殴る!!!」





――――ほんと、こんなので誕生日プレゼントになったんだろうか。








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