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011






あのウィンターカップから半年が経った5月。


私は2年生になった。
先輩は、進学した。


先輩が唯一似合っていると言ってくれたミントグリーンのプリーツスカートを履いて、私はストバスのできるところに来た。




「自分、それやとバスケできへんやろ」



後ろからかかった声。

直に声を聞くのはいつぶりだっけ。

私からする滅多にしない連絡はメールばっかりで、先輩からの連絡は文章より声を聞きたいからと電話だった。
それでも忙しいときに連絡したら悪いからとメールを使い続ける私の心情を察してか、怒られることはなかったけど。



「いいんですよ、私観る専門ですから」



振り返ると、お洒落な格好をした先輩が立っていた。

片手にバスケットボールを持って。




「自分、ちょっとは出来るやろ」

「初めてボール触ったの、前の秋ですよ?」

「ええねん、ワシが指導したるわ」

「いかに厳しいか部活見てたら分かるので遠慮しときます」



実は。

1度も触っていないバスケに触れた。
運動神経が悪い私にバスケはかなり難しくて、本格的のものなんて出来るわけがない。




「運動神経悪いん青峰から聞いたことあるわ、スポーツテストオールDやろ?」

「先輩、肩震えてます。殴んぞ



スポーツテスト、小中高とオールDの気持ちが分かるか!どーせAなんでしょ!

頭良くてスポーツもできて顔も良いのになんで性格悪いんだか…。
まじもったいない。


吠える私に、先輩は楽しそうに腰を曲げて私と視線を合わせる。
めっちゃ馬鹿にしてるんですけどこの人!




「思いっきり笑うてええの?」

「そう言う意味とちゃうわ!あ、方言移った…!」

「アホや!ワシ、アホの子嫌いやないでー?」

「頭悪い訳じゃねーし!あんたが頭良すぎるだけやし!」

「せやからアホの子やろ?」

「うっぜええええ!!!」




爆笑する先輩の腰辺りをグーで殴る。
所詮スポーツテストDの力なんてたかが知れているけど。



「そのスカート、よう似おうとるやないか」

「!!…そりゃ、似合うって言われたんで」



急に大人しくなった先輩にちょっと怯む。

いきなりそんなこと言われても、困る。てか照れる。




「自分のそう言うとこ、好きやわ」

「ありがとうございます」

「そこは、私もですやないんか」

「私がそんなこと言うように見えます?」

「見えへん」

「じゃあ言うな」



ぽすん、とグーでもう一発。

けたけた笑う先輩には敵わない。




「さーて、どっか行こか」

「この前話した喫茶店が良いです」

「栖条の奢りで?」

「割り勘です」

「嘘やて、ワイが奢ったる」

「え、やだ!」

「そこは女らしゅう奢られとき」

「えー!」



渡されたボールを両手で抱えて先輩を見上げる。

抗議したけど、いつもの胡散臭い笑顔でかわされた。















――――…今吉先輩と後輩の話。







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