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次は、決勝だ。



――――桐皇のいない、決勝。















桐皇戦のあと控え室まで走ったせいで私の目撃者多発。
黒子くんにもバレていた。



「おかん、来てたんですね」

「や、やほー黒子くん」



準決勝、海常と誠凜の後のことだった。

ちなみに私はその前の秀徳と洛山との試合で号泣。この準決勝でも号泣だったため私はもう酷い顔をしていた。(青峰くんに笑われた)



「来るなら来ると言ってください」

「え…あ、ごめん」

「キセキのオカンが来ていると知ったらモチベーションが違います」

「そんなもん…?」

「小学校の参観日にお母さんが来てはりきるのと同じです」

「(ガチおかんだ…)」



今さらだけどおかんだ、私の扱い。
そりゃそれ以外に扱われても困るけども。



「黄瀬くんには?」

「言ってないよ、今朝応援メールしたけど」

「彼、あなたが来ていると知って舌打ちしてましたよ」

「え、素出てないかそれ」



黄瀬はキレると恐い。いや、青峰くんくらいなんだけど(青峰くん慣れてる)、黄瀬は普段のギャップと違いすぎてこわい。



「怒られる前に行った方が良いと思います」

「でしょーね」




それは仕方ない。
隠れていたから普通に応援メールだけで良かったのに。行かない理由は課題が終わらないからとかそんなんでこじつけてたのにバレたなら仕方ない。



「オカン」

「ん?」

「泣きすぎです。目が腫れて酷い顔をしてますよ」

「さっき青峰くんにも笑われた」

「泣いたときは目を擦るのではなく、柔らかい布で当てるだけ。そう言ったのは黄瀬くんと栖条さんでしょう」



全く。呆れた素振りを見せた黒子くんは手に持っていたタオルで目を押さえてくれた。



と、



「いつまでワシんことほっとくつもりや」

「あれ先輩外で待ってるって…」

「遅いわ」

「……ああ、桐皇の、」

「今吉先輩。今日、先輩と来てたから」

「……」

「黒子くん?」



タオルを私に預けて、黒子くんは1歩私の前に立つ。



「オカンに手を出したら、キセキが許しません」

「それ、青峰と桃井にも言われたわ」

「え、言われたんですか?」

「何であなたが知らないんですか」

「え…だって知らないし、」



キセキが許しません、か。


黄瀬も同じようなこと森山先輩とかに言ってたような気がする。

なんだこの特別扱い。オカンの重要性がよくわかるこの感じ。



「安心しい、恋愛感情はないから。雰囲気可愛いよりほんまの可愛い子の方がええし」

「うっさいわ、雰囲気可愛い言うな!」

「あ、関西弁移っとる」

「!! 先輩のせいですよ!」

「…(恋愛対象と言うより、兄弟に近い、と言うことでしょうか)」



むっかつくー!

だって、先輩といるから移るんだもん!絶対先輩が悪いし!



ぎゃははは!とらしくもなく大爆笑の今吉先輩がどーしても苛立って、先輩の服を引っ張る。



「ごめん、黒子くん。ちょっと先輩外に出すからまたね!」

「ええ、また」

「行きますよ、先輩!」



雰囲気可愛い言うな!



ずんずん引っ張っていたはずなのにいつの間にか立場が逆転。

私が引っ張られていた。



「自分、ほんまええ後輩やわ」

「あんたも中々良い先輩ですよ」



胡散臭い笑みに、挑発的な笑顔で返した。

このやり取りは、とても好きだ。












先輩は 糸目で胡散臭くて性格悪くて妖怪なんて呼ばれたりしているのに。


バスケと目を開いたときは格好良い先輩。


名前を、今吉翔一と言う。





――――…私の大好きな、先輩だ。






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