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――――…ウィンターカップには内緒で行っていた。


誰にも何も言わずにキセキが出る試合は全て見た。




最初に黒子くんと青峰くんがぶつかった。

何も桐皇だけに行っていた訳じゃない。誠凜にも海常にも秀徳も陽泉も洛山も福田総合も。


キセキとは全て、関わりがあった。



だから黒子くんと青峰くんの試合は、息が出来なかった。青峰くんに勝って欲しかったけど、敗けを知らなきゃいけないと思ってた。


結論から言えば、負けて欲しかったのだ、青峰くんに。昔の青峰くんに戻って欲しかったのだ。

バスケが大好きだった青峰くんに。
今でも大好きって知ってるけど、楽しいバスケじゃない。

好きだけど楽しくない、その気持ちが分かるかと怒鳴られたこともある。


私には分からないけど、そこは黒子くんと桃井ちゃんと同じ気持ちだった。






けど、けどさ。




今吉先輩には、勝ってほしかった。




3年生だ。これが、最後だ。
高校最後の、大会だ。



――――なのに、負けてしまった。




『すーちゃん、行ってあげて』



試合終了後、桃井ちゃんからそのメールをもらった。

バレてたのかと。そんなことを思う前に走った。






「先輩!」

「…栖条」



桐皇の控え室には先輩しかいなかった。




「…負けてしもた」

「!…、はい」

「最後の最後で、負けてしもた」

「はい」

「誠凜は強いわあ」

「…はい」

「それでも、最強は青峰やねんで」

「はい」

「……うちが、最強や」

「はい」



今吉先輩の中で、最強は青峰くんで、最強は桐皇なのだ。

それは絶対、変わらないのだ。



先輩の前で膝立ちをする。覗き込むなと言うように、抱き締められた。


顎を先輩の肩に預ける。後頭部を強く押されて、距離がさらに短くなった。



「……」

「……」



ぽんぽん。

背中を一定のリズムで叩く。



抱き締める力が強くなって、静かにその行為を続けているとこっちの涙腺が緩む。



「…ッ、」



先輩には、負けてほしくなかったなあ。







結局、先輩が泣いたのかどうか、分からない。







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