「倉田若さん、今日の昼は何?」
「唐揚げ入りサラダパスタ。そっちは?」
「お好み焼き風オムカツ」
机をくっつけて、何も言わず互いの弁当をつつくのが当たり前になった今日この頃。
やば、オムカツまじ美味しい。臨也ママ尊敬だわ…。
「てかさ、折原」
「何?」
「その、フルネーム呼びやめない?」
「え、今更?」
「今更」
わかちゃん、と呼ばれていたから違和感があるのもあるけどまずフルネームはないでしょフルネームは。
平和島ですらシズちゃんなのに私はフルネームって何。
なーんか、気に入らない。
「え、何て呼ばれたいの? 俺の女とか自意識過剰なこと思ってるの? はっ! 何てキチガイなんだろうねえ!好きだよそう言うとこ!」
「自過剰なんはお前だ折原!フルネーム呼びは煩わしいつってんだよ!」
教室ん中で誤解を生むようなこと叫んでんじゃないよ!
「お前、私がお前の女気取ってるように見えるか?ああ?
正座させるぞ」
「…………」
「文句あるか?」
「ないよ。パスタ美味しい」
「ならよろしい。オムカツ絶品だわ」
ちょ、ちょっと焦った!どうしよう、バレてないよね?大丈夫よね?
平然装ってオムカツ食べてるけど内心汗だらだらだ。
いや、もう臨也の傍にいたいけど、いたらいたで墓穴掘りそうで怖い。
「ねえ、君たち恋人すっ飛ばして夫婦になったの?」
「「違うから」」
近くで食べていた岸谷が前と似たような疑問をぶつけられた。やだなあ…夫婦とか。夫婦とか!
「でも夫婦になったら臨也が尻に敷かれるのかな?」
可笑しそうに笑う岸谷に対して臨也が眉間に皺を寄せた。
あ、目に見えてわかる不機嫌ぶりは珍しい。
「亭主関白貫くけど」
「それ根底からひっくり返してやるけど」
「…」
「何か文句ある?」
文句なんて言わせるか。
少なくとも“ここ”の折原に負ける予定は、ない。
「でも、」
「?」
「わかちゃんに勝てる気がしないのは事実かなあ」
「!」
11.息と、思考が止まった。
「なんてね」
「……」
前言撤回。
臨也には今も昔も関係なく勝てる気がしない。
呼び方が同じなんて反則だ。
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