壁外調査の書類整理が終わりを迎えた頃、その人は来た。
「やぁ!元気かい?」
「ハンジ分隊長っ!」
懐かしい顔に顔がほころぶ
「いやぁー、リアが居なくなってから寂しいよー。早く戻ってきてくれないかなぁ」
どかどかと部屋に入ってくるなり兵長の椅子に座る
「ハンジ分隊長、そこは兵長の場所です。こちらにどうぞ」
ソファーを勧めれば、威勢の良い笑い声が聞こえてきた
「ははっ!リアはよく気を遣うなぁ!最近どう?心配してたんだよ?」
その場から動く気配すら見せずに分隊長は肘をついた
「おかげさまで、やっと少し慣れてきました」
嘘ではない。
最近は静かな部屋に慣れて、前よりも仕事がしやすいと感じられるようになった。(ハンジ分隊長の所に居たときは騒がしくてそれどころじゃない日も多々ありましたし)
リヴァイ兵長が話し掛けてくるのは仕事を頼むときや喉が乾いた時などきちんとした理由がある。(ハンジ分隊長は理由も無く話し掛けてきましたし)
だから仕事はしやすい、と思う。ただわがままを言えば、やはりリヴァイ兵長は取っ付きにくいという事くらいだ
「紅茶、入れますね」
「ありがとう」
奥の部屋に準備しに入る。
先日の紅茶を入れよう。
リヴァイ兵長に不味いと言われてから入れなかった紅茶が余っている
(にしても独特なにおい)
紅茶の匂いを嗅げばなんとも不思議な匂いがした。
初めていれた時もこの独特な匂いに驚いたが、まぁ、リヴァイ兵長が好きなら美味しいのだろうと思っていたからだ。
「どうぞ」
「ん?あれ?この匂い…」
「あ、はい。前に分隊長に頂いたものです」
「これリヴァイに出した?」
「はい」
「……どうだった?」
にやにや、とハンジ分隊長の顔が緩んでいく。
「いれ方が下手だったようで、不味いと言われてしまいました」
「そう!それで??蹴られた?それとも殴られた?」
「リヴァイ兵長はそんなことしませんよ――‐」
何を言ってるんですか?と繋げようとした瞬間だった。
「なにやってる」
ドアが開きリヴァイ兵長が入ってきたのだ
「あ、お帰りなさい」
「この匂いは…またいれたのか」
漂う匂いを嗅ぎリヴァイ兵長は眉間に皺を寄せた
「ははっ!すっごい眉間の皺!ねぇ、君飲んだんだって?」
「………まさかてめぇ」
「そう!私があげたんだよリアに!」
「…ちっ」
「??」
「君も優しい男だねぇ!」
「うるせぇ。人の椅子に座るんじゃねぇよ」
「いだっ!!あっづ!!熱い!」
「は、ハンジ分隊長!」
リヴァイ兵長がハンジ分隊長の座っている椅子を蹴り、椅子が倒れてハンジ分隊長の顔に紅茶がかかってしまった。
急いで冷やさなくては火傷をしているかもしれない!
私はあわてて拭くものを用意し分隊長に渡す
「見たかい?これが本当のリヴァイだよ!騙されちゃダメだからねリア!」
「すみません、話が見えないのですが…」
「だからね、この紅茶は私が配合したやつなんだ!」
ハンジブランドだよ!とウィンクするハンジ分隊長ですがそこまで聞いてもよくわからない
「私が適当に適当な紅茶をまぜたんだ!美味しいわけないだろ」
はははっと笑う。
え?なら私は騙されていたって事ですか??
「リヴァイが怒って手をあげるかと思ったんだけど、大丈夫だったみたいだね」
「わ、私実験されていたんですか!?」
「失礼だなー、そうじゃなくて、殴られたら異動が取り消しになるかもしれないだろ?」
君のためさ!なんて言ってるけれど絶対に思っていない。
だって今まで私情での異動なんでほとんどないのだから。
(この人本当に楽しんでるんだろうな)
はぁ、とため息が出
「リア、早くこの害虫を追い出せ」
「ひどい!」
(追い出すも何もハンジ分隊長は私より上の立場の人だし…)
できるはずもない。と思い動こうとしなかったからか、今度はリヴァイ兵長がため息を着いた
「ついでにお前の異動は前回の壁外調査の後すぐに決まっていた」
「えっ」
「……」
ハンジ分隊長の顔が引きつっていく
「お前はこいつのせいで前日に辞令をうけたってことだ」
「なっ、ほ、本当ですか!?」
「さー、てと。仕事しようかなぁ」
「ハンジ分隊長!!」
「だって!巨人の実験に忙しかったからさ」
ごめん、と言われれば怒る気にもならない。
「でも、君はいつまでも私の部下なんだろ?」
キラキラした笑顔。あぁ、確かにあの日私はそういいました。
ですが――‐
「私の直属の上司は、リヴァイ兵長一人ですっ!」
ふんっと顔を背ける
信じられない。いくら何でも巨人より後回しにされるとは。
「残念だったな」
「!」
リヴァイ兵長と目が合った。
すぐに彼は視線を反らしたが、リヴァイ兵長は少しだけ、本当に少しだけ口の端をあげていた。
(わ、笑ったの、かな)
急になんだかこちらが恥ずかしくなってしまい、熱くなった顔を隠すために急いで新しい紅茶を入れるために奥の部屋に進んだ
真実とは
(兵長も、人の子だものね)
私はすぐに余ったハンジブランドの紅茶をごみ箱に捨てた
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