足取りが重い。
昨日私は書類を拾い集めた後すぐに自室に戻った
兵長に言われたからではない。
兵長と顔を合わせるのが気まずかったからだ
(私はもう新兵じゃないんだし、仕事は仕事できちんとやらなくちゃいけないのに……)
それなのにどうだろうか。
兵長が苦手だと言い続け、勝手にびくつき失敗し……呆れられて当然だ。
またじわりと涙が浮かぶ
「やぁ、リア」
「?」
後ろから声が聞こえて顔を上げればナナバさんが居た
「おはようございます、ナナバさん」
「おはよう。今日も可愛いね」
「はぁ、ありがとうございます」
もうこの挨拶にも慣れてしまった。今まで何人の女性にこう言ってきたのだろうかこの人は。
「……なにかあった?」
私の顔をまじまじと見て言う
「……仕事でミスしてしまいまして」
「珍しいね」
「…………」
「まだリヴァイに慣れないのかな?」
(核心をつく人だなぁ)
私が返答に困っているとナナバさんは少し笑って言った
「リヴァイは見た目は怖いけど部下を大切にするいいやつだよ」
歩いていくナナバさん
「もっとよくリヴァイを観察してごらん」
(観察って……犬や猫じゃないんだから)
胸のモヤモヤが晴れないまま私はリヴァイ兵長が居るだろう部屋にむかった
****************
ノックを数回して部屋に入る。
正面にはいつも通りリヴァイ兵長が居たが、今日は少し違った
(寝てる……)
そこには頬杖をついて静かに寝息をたてるリヴァイ兵長が居たのだ
(人類最強が、こんな無防備に寝るのね)
よほど疲れているのかもしれない。
私はなるべく音をたてないようにして椅子に座り、自分の仕事を始めた。
もともと文章を書くのは嫌いではないし、書類に目を通すのにも嫌悪感は抱いたことがあまり無い。(ハンジ分隊長は凄く嫌がっていたけど)だからこの静かな部屋で行えば自分の提出書類はすぐに終わってしまった。
あと目につくのは、私の倍はあるだろう兵長の書類だけだ。
(兵長クラスになればやる事も多いよね)
音を立てないように細心の注意をしながら彼の机に向かう
机の書類を取り、空いている机に置き換える。
(迷惑だと言われるかな)
書類の中身を確認しながら振り分けをしていく。
添付されている資料の大事そうな所は色付きのペンで線を引きまとめた。
ハンジ分隊長の所でお世話になっていたときにやっていた事だ。
彼女は忙しく、巨人の相手ばかりするから提出書類が一向に進まなく、その対策として。
(懐かしいなぁ)
ぺらぺら、すらすら。
整理を始めて数十分後。
(あ、そういえば…)
私は思い出したことがあり、書類を元の位置に戻して部屋を出た
************
(これ、美味しいのかな)
手に持っているのは小さな袋。。中には紅茶が入っている。
前にハンジ分隊長にいただいた物だ。
『これ!リヴァイが好きな紅茶だから!』
あぁ、ここで役に立つとは!
ハンジ分隊長ありがとうございます!と考えながらドアの扉を開ける
「どこに行ってた」
「え?あ、おはようございます」
そこには既に起きていた兵長が居る。
「すみません、これを取りに自室に戻っていました」
袋を見せれば、特に興味も無いのだろう兵長は少し見ただけで視線を反らした。
「これはお前が?」
「あ、はい。自分のが終わってしまったので。すみません、勝手に触ってしまい…」
トントン、と書類を指差す兵長。機嫌を損ねてしまったかもしれない。だっていつもより声が低い気がするもの。
「いや、助かる」
「えっ」
「なにしてる。早く入れ」
「は、はいっ」
驚いた。バクバクと心臓が鳴る。助かるって、ありがとうって事でいいのかな?人類最強が私に?
(嬉しい…)
「喉が乾いた」
「す、すぐ用意します!」
私は急いでお湯を沸かすため部屋の奥に進む
少しだけリヴァイ兵長に目を向ければまた書類にサインを始めている。
木漏れ日が余計格好よく見せるのは私が安心したからだけじゃないだろう。
(少しは、失敗を取り戻せたかな…)
私らしく
(この後、頂いた紅茶を入れたけど不味いと言われて私はまた落ち込んだ)
(物で機嫌を取ろうと考えたのがダメよね)
(でも、ハンジ分隊長が兵長が好きって言ってたのになぁ)
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -