(好き、ってなんだろ)
馬を走らせながら考える。
好きな相手のことを考えるよりも巨人の事を考える時間の方が多かったからか、好きという感情が鈍っている感じがした。
(手を繋ぎたい、とか?)
リヴァイ兵長と?と考える。
頑張れば手は繋げるかもしれない。壁外でどさくさに紛れて。
あ、でもアンカー握ってるし無理かな、なんて他人事みたいに考えた。
(じゃぁ、キス、したい、とか??)
前を走るリヴァイ兵長を盗み見する。
薄い形の良い唇が目に入る。
(んー、別に、なんというか、そうではない、ような。というか私変態みたい)
顔が赤く染まった気がする。
「リア、考え事はおわったか?」
「へっ?」
「顔に出てたぞ」
「す、すみません」
リヴァイ兵長に見られていたなんて知らなかった。
少し恥ずかしい。貴男の事考えてました、なんて言えないけど言いたい。
(どれもハンジ分隊長が変なこと言うからよ)
私は馬の腹を蹴ってスピードを上げた
******************
「汚いねー」
「…本当ね」
私は手にほうきを握って立っていた。
私達の拠点となる城は古く、誰も使っていなかったため汚なかった。そのためまずは掃除から始めるようにとリヴァイ兵長から指示があったのだ。
「ペトラ!む、虫!!」
「え?もー、やだー」
「ひ、や!やだー!!!」
ペトラは対して気にしていないのか掃除を始めた。
私は大きな虫に近寄る事ができなかったため少し距離をおいて掃除を始める
「ねぇ、リア」
「な、なにー?」
「兵長の事どう思う??」
「え?」
ペトラは私に背を向けたままだ。
「ど、どうって?」
「リアって兵長とかなり親しいじゃない?だから色々ききたくて」
こちらを向いたペトラと目が合う。ペトラは笑顔だった。
私の親友のペトラ。
いつも辛いときに話を聞いてくれて、同じ班になって嬉しいはずなのに
(やだ)
汚い感情がドロリと口から出そうだ
もしかしてペトラは兵長に気があるのかもしれない。
だから私に兵長の事を聞いているのかも。
彼女は可愛い。素直だし、気もきく。冗談だって面白いし明るい。もし私が兵長だったら自分ではなくて間違いなくペトラを選ぶ。
「リア?どうしたの??」
動かなくなった私を気遣ってペトラが一歩近づいた時、やっと私は口を開けた
「兵長はっ、潔癖症だよっ」
うまく笑えただろうか。
引きつっていたかもしれない。
「ふふ、そうだね。しっかり掃除しなきゃ」
ほら、やっぱり可愛い笑顔でそう言うのだ。
私がこんなに汚い感情を隠してるのに。
「ねぇ、ペトラ…」
「なに?」
「ペトラは…兵長の事、どう思う…??」
バクバクと心臓が鳴る。
口に出した後に質問しなきゃよかったと後悔した。
だって、もしペトラが兵長に恋愛感情を持っていたら私に勝ち目はない。
かといって兵長を他の女の子に取られて平気なわけもない。
(あれ、なんか、心臓いたいな)
ズキリとした痛みが胸にあるが私はほうきを握りなおして答えを待った
「リア、聞いて欲しいんだけど絶対に私が言ったって言わないでくれる?」
「え、あ、うん」
また一歩近づいたペトラ。
なんだかとても楽しそうな顔だ。
「私ね、兵長――」
(ダメ、聞きたくない……!!)
「あの、上終わったので手伝います」
「あ………」
ペトラはその続きを口にできなかった。
エレンがドアから入ってきたからだ
「もう上終わったの?」
ペトラがエレンに近づくため私の横を通り過ぎた
(……………よかった)
心臓がうるさい。
でもどこかでほっとしている自分が居た。
(ペトラは、大切な友達なのに)
自分の汚さに嫌気がさす。
「リアさん?」
「エレン君…」
「どこか具合が悪いんですか?顔色悪いみたいですけど」
「え、あ、大丈夫。ちょっと埃っぽ過ぎて気分悪くなっちゃった」
「本当、顔色悪いわ。ごめんね気付かなくて…ここは私がやるからリアは休んでて?」
「大丈夫だよ。ありがとう。でもちょっと顔洗ってくるね」
私はほうきを入り口に置いて廊下に出る
外に行けば空気は澄んでいた。
(痛いなぁ)
いまだに痛む胸の中央
(これが、好きって事なのかな……)
1人息を吐く。
答えを聞くのが怖くて逃げ出した私はまた足を踏み出した
再認識させられる心
(答えをだしたらきっと笑えない)
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