あの日から彼には会っていない。理由は簡単だ。地下が怖いから。
(あんな暗いとこ行けないよ)
あの子の事は気になるがあそこに行く勇気は私にはない。絶対に。
(ハンジ分隊長に解剖されてないといいんだけど…)
あの人ならやりかねない、なんて考えが浮かび首を振る
(彼女も人の子。流石にないわよね)
「リアっ!」
「ひゃぁ!」
考え事をしていると反応が遅れてしまう。後ろからの声に肩が跳ねた
「ここに居たのか!探したよ!」
「ハンジ分隊長…」
今あなたの事考えてましたよ、と心で呟く
「どうしたんですか??」
「こないだ巨人になる子に会っただろ?その子調査兵団で管理することになったんだ!」
「えぇ…、いつのまに」
また団長がなにか企んでるのかな、と考えて居ると思ってもない言葉が返ってくる
「リヴァイ班でね!」
「え゛っ!?」
*****************
「なんでボロボロ?」
こてっと首を傾げれば目を背ける男の子と笑って誤魔化すハンジ分隊長、そして無関心な兵長。
男の子は私を見て少し目を大きくした後に手を出した
「あの、エレン・イェーガーです。よろしくお願いします」
「リアです。よろしくね」
握手した手は男の子らしい骨っぽい手だった。
男の子は新兵で今期のトップ10にも入っているのだそうだ。
「なんだー、普通の男の子じゃない。良かった」
ほっと胸を撫で下ろせば男の子と目が合う
「巨人になるなんて言うからもっと怖い人かと思ったの」
へらっと笑えば男の子――エレンに目を反らされてしまった。
流石に失礼なこと言ってしまったかな?と不安になっているとエレンが口を開く
「自分でも、なにがなんだかわからなくて…」
「そ、そうだよね。ごめんね」
眉間に皺を寄せた彼。
どこかで見たことがある気がした
「ねぇ、どこかで、会ったことある…?」
「あ、やっぱりですか?俺もさっき思いまし――っだ!!」
「おい、挨拶はそこまでだ。今後の説明をするから黙れ」
「え、エレン君!大丈夫?」
エレンの最後の言葉よりも早く兵長がエレンの腰を蹴った。
相変わらず身体が柔らかいなと思うと同時に理不尽な暴力に苦笑いしかでない
「いてて…!」
「後でちゃんと医療班の所に行ったほうがいいよ」
他の怪我も見てもらわなきゃね、と繋げれば彼もまた苦笑いをした。
「痛い?」
「大丈夫ですよ」
うっすら笑う彼は年下に見えないくらい落ち着いてる。
痛くないと言われて頬に手を当ててみればエレンは眉間に皺を寄せた。
「ふふ、やっぱり痛いんじゃない」
我慢しないでね、と笑って言えばエレンは少しだけ頬を染めて目を逸らした
「聞こえなかったのか?黙れ。」
「「すみません」」
みんなで席に着いてエルヴィン団長が配ってくれた資料に目を通す
私はハンジ分隊長の隣に腰を下ろした。
途中リヴァイ兵長とエルヴィン団長が話し込んでしまって暇になるとハンジ分隊長と目が合ったので少し腰をあげて近寄る。
(なんか、リヴァイ兵長機嫌悪くないですか?)
私は正面に座るリヴァイ兵長の眉間の皺と声のトーンを聞きながら小さな声で話す
(……リアのせいだよ)
(えっ!私何もしてないです!)
(君がエレンに優しくす、る、か、ら、だ、よ!)
強く言われて私は肩をちぢこませた。ついでに持っていた資料がくしゃりと鳴る。
(優しくもなにも、同じ班員です。年下ですし…)
(前は怖いとか言って近寄りもしなかったくせに)
(こ、怖いのは地下だったからです!それにエレン君思ったより話しやすくて)
資料で口元を隠しながらの会話。ハンジ分隊長は目を細めて私を見る
(それ、間違ってもリヴァイに言わない事だね)
(え?)
(リヴァイの機嫌をなおしたいなら、リアがリヴァイに好きとでも言えば一瞬でなおると思うけど?)
「なっ、す、そ、!!」
好きだなんてそんな事!と言いたかったのに口からはうまく出せなかった。
「……リア、君声が大きいよ」
「す、すみません…」
その声のせいでリヴァイ兵長は私の方を向いていて、私は顔が熱くなるのを感じた
「リア、こっちにこい」
低い声。このトーンは機嫌が悪いときの低さだ。
「あ、あの、本当にすみません。静かに――」
「こっちにこい」
「はい……」
指をリヴァイ兵長の隣にさされてしまえば私に拒否権はないのだ。
「ハンジ、人の部下にちょっかい出すんじゃねぇよ」
「酷いな!私はなんにもしてないよ!」
「そうかよ」
きっ!とハンジ分隊長に睨まれて私は急いで目を逸らした
話し合いはまた進み、私は難しい話についていけなくなり、さっき言われたハンジ分隊長の言葉だけが頭をくるくると回っていた
(好きって言えば、か)
もんもんと考え出した頭は止まってはくれず、私はリヴァイ兵長に肩を叩かれるまで資料を見るふりを続けたのだ
簡単には言えない言葉
(兵長の機嫌早く良くならないかなぁ)
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