「ここは平和だなぁ」
「壁外に何度も行く奴がよくいうぜ」
隣で綺麗な水が流れている。
その向こうには色とりどりの花が咲いているし平和そのものだった。
「でもねおじさん、壁外はここよりももっと自由なんだよ」
「巨人がわんさかいる場所になんて絶対行きたくないね」
私よりも背の高い細身の男は手を顔の前で振りながら答えた。
今日私は奥地に来ていた。
私たち人類が生きていく中でもかなり安全なところ。
そこになんのようかと言うと、私は大切な書類を届けに来ていた。
「巨人は怖いけど…」
「ほら見ろ。お前早く異動届けだせ。俺は姉さん達に顔向けできねぇよ」
「ははっ」
彼は私の母の弟だ。憲兵団に所属している。
私は少し前のリヴァイ兵長との会話を思い出した。
『えっ、私今回壁外調査に行かないんですか?』
『あぁ。今回は必要ない』
『何故ですか?私怪我とかしていないんですが』
『リアには違う仕事がある。これを憲兵団に渡してほしい』
『?』
受け取ったのは茶封筒だった。
『中は見るなよ』
『み、見ませんよ』
『確か憲兵団に知り合いが居ただろ?』
『あ、はい。母の弟が』
『そいつに渡せ』
そう言ってリヴァイさんは壁外に行くための準備を始めた
(なんでおじさんなんだろ…)
「リア、あの人類最強の班になったんだろ?」
「そうだよ」
「その、俺が言うのもあれだが…本当になるべくもっと安全な班に異動できないのか?なんだったら憲兵団に……」
おじさんは眉を下げて言う。
「俺は、お前に死んでほしくない……!姉さんもそう願ってるはずだ」
「………」
私の母は流行り病で随分前に無くなっている。
父は壁外調査に行ったきり帰ってはこなかった。
「ありがとう、でも大丈夫だから」
顔を見て言えないのはやっぱり心のどこかで自分でも危険だとわかっているから。
「私ね――‐」
「おい、嘘だろ?!」
口を開こうとしたときだった。
叫びながら知らない男性が私達の横を走っていくのが見えた。背中には憲兵団のマーク。
「なに…??」
「おい、どうしたんだ」
おじさんが一人捕まえて話を聞く
「壁がっ、壁が壊されたらしい!お前達も手伝え!!」
「「!!!」」
嘘だと思った。100年以上も壁が私達を守っていた。それなのに壊されるなんて
(なんで、今日…!)
一番の戦力になる調査兵団は今壁外に行ってしまった。
私達もすぐに壁を越えた。
逃げ惑う人々と反対方向に走る。
途中に憲兵団が集まっているのが見えた。
みんな戦闘準備をしている。
「私にも貸してください!」
今日私は立体起動を持ってきて居ない。声をかければ強面の男が私のもとへ来た
「お前は?」
「調査兵団所属のリアです」
「そうか。誰かこいつに立体起動を」
若い女の子が持ってきてくれたものを受け取り装着を始める
周りから憲兵団達の声が聞こえた
「くそっ!なんで!」
「巨人がわんさか入ってきてるらしいぞ!」
「いやだ!死にたくない!」
なんとも情けない周りの声
「あの、本当に行くんですか?」
「え?」
立体起動を貸してくれた女の子が私に声をかけた
「巨人がいるんですよ?」
「そうだよ」
女の子の顔は真っ青だ。
「わ、私、巨人なんか倒せない…!」
じわじわと涙を浮かべている彼女は本当に兵士なのだろうか。
私は黙って歩き始める。
「リア!!」
「おじさん…」
「行くな。お前は避難誘導を行え」
「何言ってるの?まだ壁は一枚しか壊されていないわ!次のウォール・マリアに到着するまでに巨人を―‐!!」
「お前じゃなくてもいいだろ!!!」
「―‐っ、じゃぁ誰だったらいいの!?」
肩を捕まれた。
おじさんの声はとても悲しそうだ。
「お前、昔から怖がりだっただろ……?だから……!」
行かないでくれ、と彼は小さな声で言った。
周りも騒ついている。
立体起動を付けているのにいっこうに動こうとしない人やぶつぶつと狂ったように呟く人
「私は―‐」
刃を装着して構える
「怖がりだけど、腰抜けじゃない」
「―‐!」
「てめぇ!俺たちを腰抜けと言いたいのか!!」
憲兵団の一人が私に叫んだ。さっきから準備ができているのに動かなかった奴だ。
「あなたたち訓練をトップで合格してるんでしょ!?だったら戦いなさいよ!!」
「俺たちは王のもとで働くのが使命だ!お前達のようにバカみたいにのたれ死ぬ奴と一緒にするな!」
「そのバカの方がよっぽど今使えるわ!貴方達はそこで指を咥えてればいい!!自分達の力の無さを感じながらね!」
私はアンカーを飛ばす。
ウォール・ローゼの先はすでに封鎖されているからだ。
「リア!!」
壁を登って見た光景は――‐
「巨人が、あんなに―‐」
いつも壁外でしか会わなかった巨人。こんなに近くまで……
私はアンカーを握りなおした。
(怖い)
巨人と目があう。こちらを向いてニタニタと笑う顔がますます恐怖心を煽った
(巨人は怖い、でも)
「大切な人を失うのは、もっと怖いよ……」
私は足を踏み出した。
非難警告の鐘が町中に響く。
戦いの鐘が鳴る
(その時小さな男の子と目が合った)
(意志の強そうな目に目が離せなくなったのは誰にも言えない)
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