「明日、出かけるぞ」
「え?」
「昼過ぎに迎えに行く。身支度しとけよ」
バタンとドアが閉まる。
それが昨日の話で
(急になんなんだろ…)
外を見ればいい天気で、真っ青な空。
今日は久しぶりの休みで出かけようと思っていた。もちろん一人で。
だが、兵長に昨日ああ言われたのだ。勝手に出かけるわけにもいかない。
(でもまず何があるの??)
出かけるってどこに??
とりあえず休みなのだから私服でいいだろうと思いクローゼットから服を取り出す。
大好きなピンクのワンピースだ。
(何が買い物の手伝いなのかなー)
着替えて少しすると小さなノックが数回聞こえた
「支度はできたか」
「あ、はい」
ドアの向こうにはリヴァイ兵長が立っていた。
「……悪くない」
「な、なにがですか??」
上から下に兵長の目が動き最後に私の頭で視線を止めた
「行くぞ」
(なにがよー!)
答えはわからないまま私はリヴァイ兵長を追い掛けた
「あ、あの、今日はどこにいくんですか?」
「あぁ、紅茶を買いに行く」
「えぇ?」
仕事関係では無さそうだ、この買い物は。
「不満か?」
「い、いえ」
そんな事口が裂けても言えない。
リヴァイ兵長のシャツが風に揺れる。
(制服以外なんて初めて見たな…)
ただの白いシャツに黒のパンツ。シンプルなのに格好良く見えるのはなぜだろう
(あれ?私今格好良いって思った…)
会う前は怖い人と感じて居た。
会った後は無愛想な人。
少ししたら、楽しい人。
そして今は格好良い、人……
ここ数ヶ月で随分と彼へのイメージが変わった
「おい」
「あ、はい!すみません!」
振り向いた兵長の開けたボタンから見える座骨。
「なに考えてる」
「(わわわっ!)や、やましい事はなにも!」
「…」
「兵長の制服姿以外を初めてみたので…」
「休日に制服なんか着ねぇだろ」
「そうですね…」
なんだこいつ。みたいな目で見られてしまった。
そんな話をしていると一つの店の前で止まる。花が沢山飾られている店だ。
その店にリヴァイ兵長は入って行ってしまった。私も慌てて追い掛ける
おっとりした女性の店員さんが角のテーブルを案内してくれて二人で向かい合って座る。
メニューを開くと沢山の羅列があるがよくわからない。
(ダージリン、はわかる)
きっとここに書いてあるのは紅茶の種類なんだろうなくらいの認識でよくわからないまま兵長と同じ物を頼んだ
「こないだ会っていた女は誰だ」
「え?あ、ペトラです。親友なんですよ」
「そうか」
「最近は全然会えなくて―‐」
ペトラの話をしていると紅茶が運ばれてきた。
振動で揺れた紅茶がキラキラしている。
リヴァイ兵長が一口飲むのを確認してから私も口に運ぶと、ふわっといい香が広がった
「美味しい!」
リヴァイ兵長は目だけをこちらに向けた後にそうか、とだけ応えた。
(この紅茶が美味しいのか、いれ方が上手なのか…)
「兵長はよくここにくるんですか??」
「あぁ」
こんな美味しい紅茶を飲んでいるんだ。私のいれた紅茶は不味いに決まってる。
一人でもんもんと考えていると兵長が口を開いた
「兵長って言うのはやめろ」
「え?」
「今は制服じゃねぇんだ」
「えっと……リヴァイさん?」
「なんだ」
「あ、呼んだだけです」
あっているか聞いたつもりだったんだけれど、そう言えなかった。
怒られるかな、と考えたが意外にもリヴァイさんは口を閉じたままだ。
私ももう一度紅茶を口に含む
「リア」
「っ、はい」
急いで飲み込んで兵長を見れば、ほんの少しだけ楽しそうな顔をしている
「呼んだだけだ」
「――‐!!」
兵長の細い目と視線がぶつかる。それを合図にするかのように顔に熱が集中した
(な、ななっ)
変に甘ったるい雰囲気が気まずくて私は急いでまた紅茶を飲む
砂糖なんか入れてないのになんだか甘くなったような気がする
紅茶と一緒に流れてくれれば良いのに雰囲気はまだ少しだけそこに居据わって、私は真っ赤な顔のまま俯いた
甘い紅茶
(もう紅茶の味がわからなくなっちゃう!)
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